町議会議員選挙の費用は?小規模自治体ならではの注意点も解説

町議会議員選挙の費用を調べようとすると、情報がほとんど出てきません。市議選の記事は多いのに、町議選になると途端に少なくなる。同じ数字を当てはめていいのかどうかも分からない。
結論から言うと、町村の選挙は市の選挙とは条件が違います。供託金は半分の15万円、選挙運動期間は5日間、ビラの枚数上限も市議選とは別の数字です。報酬を払える人数の枠も、法定制限額の計算式も、町村には町村の数字があります。そして2020年の法改正で、町村にも公費負担の制度が広がりました。この記事では、町議選ならではの数字を条文と実際の町の公表資料で一つずつ確認していきます。
この記事でわかること
結論:町議選は供託金15万円から始まる
町村議会議員選挙の供託金は15万円です。すべての公職選挙のなかで最も低い額です。市議会議員選挙の30万円と比べても半分です。
2020年の法改正で町村の選挙は大きく変わりました
- 令和2年6月に公職選挙法が改正され、同年12月に施行されました
- 町村議会議員選挙でビラの頒布が解禁されました(上限1,600枚)
- 選挙公営(公費負担)の対象が市と同じ3項目に拡大されました
- 同時に供託金制度が導入されました。それ以前、町村議選に供託金はありませんでした
つまり町議選は、「お金がかかるようになった」と同時に「公費で賄える範囲も広がった」選挙です。制度を使えるかどうかで、持ち出しの額は大きく変わります。
市議選と何が違うのか
混同しやすいところを並べて比較します。市議選の数字をそのまま当てはめると、枚数の上限と人数の枠を間違えます。
| 項目 | 町村議会議員選挙 | 市議会議員選挙 |
|---|---|---|
| 供託金(法92条) | 15万円 | 30万円 |
| 選挙運動期間(法33条5項) | 5日間 | 7日間 |
| ビラの枚数上限(法142条1項) | 1,600枚 | 4,000枚 |
| ビラの単価上限(令109条の8) | 8円38銭 | 8円38銭 |
| 通常葉書の枚数(法142条1項) | 800枚 | 2,000枚 |
| 報酬を払える人数(令129条3項) | 1日7人 | 1日9人 |
| 法定制限額の計算(令127条) | 人数割 1,120円 +固定額 90万円 | 人数割 501円 +固定額 220万円 |
| 公費負担の対象 | 自動車・ポスター・ビラ 条例の制定が必要 | 自動車・ポスター・ビラ 導入済み |
| ポスター掲示場 | 条例で設けることができる 任意 | 条例で設けることができる 任意 |
| 没収されるライン(法93条1項3号) | 有効投票総数 ÷ 議員定数 × 1/10(共通) | |
とくに注意していただきたいのがビラの枚数です。町村議選は1,600枚が上限で、市議選の4,000枚とはまったく違います。参考までに、町村長選挙は5,000枚です。市議選の記事を読んで4,000枚で発注すると、超過分がそのまま自己負担になります。
ビラは「1,600枚・2種類以内・証紙あり」の3点セットで考える
ビラには枚数以外にも条件があります。公職選挙法第142条が定めているのは、次の4つです。
- 枚数は1,600枚まで(法142条1項7号)。町村長選挙は5,000枚です
- 選挙管理委員会に届け出た2種類以内(同号)。表裏でデザインを変えても1種類と数えますが、別の紙を作れば2種類目になります
- サイズは長さ29.7cm・幅21cm以内(法142条8項)。A4サイズがちょうど上限です
- 選挙管理委員会が交付する証紙を貼らなければ配れません(法142条7項)。1,600枚ぶんを手で貼る作業が告示後に発生します
配り方も自由ではありません。新聞折込みや、選挙事務所・個人演説会の会場、街頭演説の場所での手渡しなど、法142条6項と施行令で定められた方法に限られます。ポストへの投函や街頭での散布はできません。ビラの制作と配布の全体像は選挙公営制度の記事でも整理しています。
通常葉書は800枚まで、無料で出せます
あまり知られていませんが、町村議会議員選挙では通常葉書を800枚まで出せます(法142条1項7号)。しかもこの葉書は無料です(法142条5項)。条例による公費負担ではなく、法律が直接定めている制度なので、公費負担の条例がない町村でも使えます。
日本郵便の窓口で「選挙用」の表示を受けた葉書を使う必要があり、枚数の確認は選挙管理委員会が行います。町村長選挙は2,500枚、市議会議員選挙は2,000枚です。有権者数が少ない町村では、800枚という枚数が全世帯の相当な割合をカバーできることもあります。使わないまま終わる候補者が多い制度です。
選挙運動期間が5日間しかないことも重要です。選挙カーの公費負担は「1日あたりの上限額 × 日数」で計算されるため、市議選より枠が小さくなります。短期決戦であることも含めて、計画に織り込む必要があります。告示日までに何を終えておくべきかは選挙準備の逆算スケジュールの記事にまとめました。
2026年1月、町村の選挙カーとポスターの規格が変わりました
2026年1月1日以後に告示される選挙から、選挙運動用自動車とポスターの規格が全選挙で統一されました。令和7年法律第20号(選挙運動に関する規格の簡素化)による改正です。
この改正は、町村の選挙にとっては他の選挙とは違う意味を持ちます。改正前は、町村議会議員選挙と町村長選挙だけが別扱いされていたからです。
町村の候補者が押さえておくべき4点
- 選挙カーは乗車定員10人以下・車両総重量3.5トン未満という基準に統一されました(法141条6項)
- 町村だけに認められていた「小型貨物自動車」の特例はなくなりました。代わりに車種の細かい区分そのものが廃止されています
- ポスターは長さ42cm・幅40cm以内になりました(法143条13項)。改正前は幅30cmまででした
- 公費の単価と限度額は、この改正では変わっていません。ハイヤー64,500円、ポスター586円88銭などの基準額はそのままです
| 項目 | 2025年12月まで | 2026年1月1日以後 |
|---|---|---|
| 選挙カーに使える車 (町村議選) | 施行令が車種を限定。乗用自動車/定員4〜10人の小型自動車/四輪駆動で車両重量2トン以下。これに加えて小型貨物自動車が使えた | 乗車定員10人以下・車両総重量3.5トン未満 全選挙共通 |
| オープンカー類の除外 | 上面・側面・後面が構造上開放されている車は除外 | 除外規定なし 条文が削除 |
| ポスターの寸法 | 長さ42cm・幅30cm以内 | 長さ42cm・幅40cm以内 幅が10cm拡大 |
| 公費の単価・限度額 | 変更なし 据え置き | |
| 使える台数 | 候補者1人につき1台 変更なし | |
選挙カー:町村だけの「小型貨物」特例がなくなり、基準が1本になりました
改正前の公職選挙法第141条6項は、選挙カーに使える車を「町村の議会の議員又は長の選挙以外の選挙」と「町村の議会の議員又は長の選挙」に分けて書いていました。町村の選挙では、施行令が定める乗用自動車のほかに小型貨物自動車も使えたのです。小型貨物自動車とは、道路運送車両法上の小型自動車に該当する貨物車のことです。いわゆる4ナンバーの小型バンや小型トラックが該当します。
いっぽうで、施行令第109条の3が定める乗用自動車の範囲は細かく限定されていました。乗車定員10人以下の乗用自動車、乗車定員4人以上10人以下の小型自動車、四輪駆動式で車両重量2トン以下の自動車の3つです。さらに、上面・側面・後面の全部または一部が構造上開放されている車(オープンカーの類)は除かれていました。走行中に屋根を開けて使えば、開放されているものとみなす規定まで置かれていました。
2026年1月1日の施行で、この施行令第109条の3は削除されました。いま条文に残っているのは、法141条6項の「乗車定員十人以下で車両総重量三・五トン未満のものに限る」という一文だけです。
改正前(2025年12月まで)
車種で判定 乗用か小型か四輪駆動か、貨物車なら町村の選挙かどうか、屋根や側面が開くかどうか。複数の条件を順番に確認する必要がありました。施行令旧109条の3
改正後(2026年1月1日以後)
2つの数字で判定 乗車定員10人以下であること、車両総重量3.5トン未満であること。車検証の記載を2か所見れば判断できます。法141条6項
町村の候補者にとっては、使える車の範囲が「狭まった」とは言い切れません。小型貨物自動車という名目の枠は消えましたが、乗車定員と車両総重量の条件を満たせば車種を問わないため、軽トラックや軽バン、ワンボックスカーも定員と総重量の2点で判断できるようになりました。実際にどの車が使えるかは車検証で確認でき、迷う場合は選挙管理委員会に車検証の写しを持って相談するのが確実です。
※ここでいう車両総重量は、道路運送車両法第40条3号の車両総重量です。車検証に記載があります。選挙カーの手配と公費の使い方は選挙カーの公費負担の記事で詳しく扱っています。
ポスター:幅40cmまで使えます
選挙運動用ポスターの寸法は、改正前は長さ42cm・幅30cm以内でした。2026年1月1日以後は長さ42cm・幅40cm以内です(法143条13項)。町村議会議員選挙も市議会議員選挙も、同じ寸法になりました。
使える面積は約1.33倍になりました
1,260cm²から1,680cm²になります。氏名を大きくするか、政策を1行足すか。限られた面積の使い方が変わります。公費の単価(586円88銭)はこの改正で変わっていないため、同じ金額で使える面積が増えたことになります。
幅40cmのポスターがポスター掲示場に収まるのかという疑問が出ますが、これは条文で裏が取れています。公職選挙法第144条の2第6項は、候補者1人が掲示できる掲示場の区画を「縦及び横それぞれ四十二センチメートル以上」と定めています。町村議会議員選挙の掲示場についても、同条10項で同じ規定が準用されます。
ポスターの中身についても、2025年5月2日施行の令和7年法律第19号でルールが加わりました。公職選挙法第144条の4の2は、掲示場に貼るポスターには候補者の氏名を選挙人に見やすいように記載することを義務づけ、あわせて他人や他の政党の名誉を傷つける内容、善良な風俗を害する内容、特定の商品の広告や営業の宣伝など、ポスターとしての品位を損なう内容を記載してはならないと定めています。
令和7年法律第20号 附則2条により、この改正が適用されるのは施行日以後に公示または告示される選挙です。それ以前に告示された選挙には従前の規格が適用されます。実務上の注意点は、前回の選挙で使ったポスターのテンプレートや、以前の候補者から譲り受けたデザインデータが旧規格(幅30cm)のままになっている可能性です。印刷会社に発注する前に、幅の指定を必ず確認してください。選挙カーについても、過去に「この車種は町村選挙なら使える」と聞いた話は、根拠条文がすでに存在しません。
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実際の町の条例で見る公費負担
宮城県亘理町が公表している公費負担の限度額を見てみます。5日間ぶんの計算です。
| 項目 | 限度額 | 5日間の上限 |
|---|---|---|
| 選挙運動用自動車(ハイヤー契約) | 1日 64,500円 | 322,500円 |
| 自動車の借り上げ(個別契約) | 1日 16,100円 | 80,500円 |
| 燃料代(個別契約) | 1日 7,700円 | 38,500円 |
| 運転手の報酬(個別契約) | 1日 12,500円 | 62,500円 |
| ポスター作成(104か所ぶん) | 1枚 3,628円 | 377,312円 |
| ビラ作成(1,600枚) | 1枚 8円38銭 | 13,408円 |
個別契約方式で合計すると約57万円、ハイヤー方式なら約71万円の枠があります。町の選挙でこれだけの公費枠があることは、あまり知られていません。
ポスターは掲示場が少ない町ほど1枚あたりの単価が高い
表のなかで目を引くのが、ポスターの単価3,628円です。市の例と比べてみます。
亘理町(掲示場104か所)
3,628円 掲示場の数が少ないため、1枚あたりにかけられる金額が大きくなります。デザインに手をかける余地があります。1枚あたりの上限
浦安市(掲示場227か所)
1,981円 掲示場が多いぶん、1枚あたりの単価上限は下がります。総額では町より大きくなります。1枚あたりの上限
この差は、ポスターの単価上限が「固定額316,250円 + 1枚あたりの単価586円88銭 × 掲示場数」を掲示場数で割るという算式で決まるためです(施行令110条の4第2項1号イ、1円未満の端数は切上げ)。固定額を少ない枚数で割ることになるので、小規模な自治体ほど1枚の単価が上がります。デザイン費や版下代を含めた考え方になっているためです。
ただし、1枚あたりの単価が高いことと、総額が大きいことは別です。亘理町は3,628円×104枚で377,312円、浦安市は1,981円×227枚で449,687円。1枚の単価は町のほうが高く、総額は市のほうが大きくなります。町村では「少ない枚数に、1枚ずつしっかり予算をかけられる」と理解するのが正確です。算式の詳しい解説と申請の手順はポスターの公費負担の記事にまとめました。
2020年の法改正で町村も選挙公営の対象になりましたが、実際に導入するかどうかは各町村が条例で決めます。制度をまだ設けていない自治体では、選挙カーもポスターもビラも全額自己負担です。立候補を考えている町村の選挙管理委員会に、条例の有無と限度額を必ず確認してください。
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公費を使うまでの手順
公費負担は、申請すれば自動で下りるものではありません。契約と届出が先にあり、支払いは業者に対して行われます。町村の条例も国の制度に準じて組まれているため、流れはおおむね次のとおりです。
- 条例の有無と限度額を確認する告示の数か月前に、選挙管理委員会で公費負担の条例があるか、限度額がいくらか、ポスター掲示場の数と議員定数を確認します。ここが分からないと発注の予算が決まりません。
- 業者と有償契約を結ぶ選挙カーの使用、ポスターの作成、ビラの作成について、業者と書面で有償契約を結びます。無償で借りたものや、自分で作ったものは公費の対象になりません。
- 選挙管理委員会に契約を届け出る契約を結んだ旨を選挙管理委員会に届け出ます。選挙カーについては、ハイヤー方式と個別契約のどちらかを選び、同じ日に両方を使った場合はどちらか一方を指定します。
- 供託金を納め、立候補を届け出る法務局で15万円を供託し、告示日に立候補を届け出ます。公費負担を受けられるのは、立候補を届け出た候補者です。
- 選挙が終わったら業者が請求する公費は候補者ではなく業者が町村に請求して、業者が受け取ります。候補者が立て替えて後から受け取る仕組みではありません。ただし供託物が没収される得票だった場合、公費負担を受けられない扱いになります。
立候補の届出に必要な書類の一覧は立候補の手続きの記事に、供託金の納め方と返還の時期は供託金の記事にまとめています。
ポスター掲示場があるかないかで、枚数の考え方が変わります
ここまで「掲示場104か所ぶん」という前提で話してきましたが、町村にポスター掲示場があるかどうかも、条例で決まります。公職選挙法第144条の2第8項は、市町村の議会の議員の選挙について「条例で定めるところにより、ポスターの掲示場を設けることができる」と書いています。「できる」であって「設けなければならない」ではありません。
衆議院小選挙区・参議院選挙区・都道府県知事の選挙では、市町村の選挙管理委員会が掲示場を設けることが義務です(法144条の2第1項)。町村議会議員選挙はその義務の対象ではなく、各町村の判断にゆだねられています。
掲示場がある町村
1か所に1枚 掲示場ごとに候補者1人1枚を貼ります(法143条4項)。この場合、法144条1項・2項の枚数制限と検印・証紙の規定は適用されません(法144条3項)。亘理町なら104枚です。貼る場所は決まっている
掲示場がない町村
500枚まで 候補者1人につき500枚が上限です(法144条1項4号)。選挙管理委員会の検印または交付された証紙が必要で(同条2項)、貼る場所は自分で確保します。貼る場所は自分で探す
掲示場を設ける場合、その総数は1投票区につき5か所以上10か所以内で算定します(法144条の2第9項)。ただし特別の事情があるときは、条例で総数を減らすことができます。亘理町の104か所という数字も、こうした算定の結果です。
この違いは、費用の計画に直接ひびきます。公費負担のポスターの限度額は、掲示場の数を計算の前提にしているからです。掲示場がない町村では、条例がどのような基準で限度額を定めているかが変わってきます。お住まいの町村の選挙管理委員会には、公費負担の条例の有無と限度額だけでなく、掲示場を設けるかどうかと、設ける場合の場所数もあわせて確認してください。
掲示場がない場合、500枚を貼る場所は自分で探すことになります。民家の塀や商店の壁に貼らせてもらう交渉が必要で、承諾のない場所に貼れば法律違反です。枚数の上限が大きいことは、必ずしも有利とは言えません。地盤のない新人がどう地元の接点をつくるかは地盤・看板・カバンなしの戦い方の記事で扱っています。
公費の外にかかるお金:人件費と法定制限額
ここまで公費負担の話をしてきましたが、公費でまかなえるのは選挙カー・ポスター・ビラの3項目だけです。実際の選挙で総額を左右するのは、ここに入っていない人件費と事務所費です。
報酬を払える相手と金額には上限があります
選挙運動を手伝ってくれる人に報酬を払えるかどうかは、相手の立場で決まります。一般の選挙運動員、つまりビラを配ったり支持を訴えたりしてくれるボランティアに報酬を払うと、買収にあたります。報酬を払えるのは、次の立場の人に限られます。
| 区分 | 1人1日の上限 | 届出 |
|---|---|---|
| 選挙運動のために使用する事務員 | 15,000円以内 | 届出をすれば可 |
| 車上運動員(いわゆるうぐいす嬢) | 20,000円以内 | 届出をすれば可 |
| 専ら手話通訳のために使用する者 | 20,000円以内 | 届出をすれば可 |
| 専ら要約筆記のために使用する者 | 20,000円以内 | 届出をすれば可 |
| 労務者(ポスター貼りなど単純労務) | 10,000円以内 | 超過勤務手当は5割以内 |
| 一般の選挙運動員 | 報酬を支給できません | |
※施行令129条が定める基準額です。2025年6月27日公布の政令第227号で、事務員は10,000円から15,000円に、車上運動員・手話通訳者・要約筆記者は15,000円から20,000円に引き上げられました。労務者の報酬額は据え置きです。地方選挙で実際に適用される額は各選挙管理委員会が定めるため、改定前の額のままの自治体もあります。
町村議選で報酬を払えるのは、1日7人までです
ここが市議選との大きな違いです。報酬を支給できる人数は選挙の種類ごとに決まっていて、町村議会議員選挙は1日7人(施行令129条3項7号)。指定都市以外の市議会議員選挙の9人より少ない枠です。町村長選挙は9人です。
さらに、届出で入れ替えられる人数にも限りがあります。施行令129条8項は、選挙運動期間を通じてこの員数の5倍を超えない範囲で異なる人を届け出られると定めています。町村議会議員選挙なら延べ35人までです。
町村議選で報酬に使える金額の理論上の上限
7人全員を車上運動員として枠を使い切った場合の計算です。事務員だけなら15,000円×7人×5日で525,000円。これは相場ではなく、法律上の枠の大きさです。実際には数人に絞る陣営が大半で、残りはボランティアでまわします。労務者への報酬はこの7人の枠とは別枠です。
報酬のほかに、実費弁償も支給できます。宿泊料は1夜23,000円(食事料2食分を含む)、弁当料は1食1,500円・1日4,500円、茶菓料は1日1,000円が基準です(施行令129条1項1号)。労務者に支給する宿泊料は1夜20,000円で、食事料は含みません。鉄道賃・船賃・航空賃・車賃は路程に応じた実費額です。
飲食物の提供は原則として禁止されていますが、選挙事務所での弁当には例外があります。公職選挙法第139条ただし書は、選挙運動に従事する人と労務者を通じて1日15人分(45食分)までを、選挙運動期間の日数ぶん提供できると定めています。町村議会議員選挙は5日間なので、通じて75人分(225食分)が上限です。
金額の上限を気にする前に、その人に報酬を払っていいのかを確認してください。事務員と車上運動員は、使う前に選挙管理委員会への届出が必要です。届出のないまま報酬を払えば、上限内の金額でも違法になります。手伝ってくれる人が増えてきた段階で、誰を届け出るかを決めておくのが安全です。
選挙運動の支出には、全体の上限額もあります
公費でまかなう分も自己負担の分も含めて、選挙運動に関する支出には上限があります。法定制限額と呼ばれるもので、公職選挙法第194条と施行令第127条が計算式を定めています。
町村議会議員選挙の計算式は、人数割額1,120円・固定額90万円です。人数割額に掛ける数は、告示日において選挙人名簿に登録されている人の総数を議員定数で割った数です(法194条1項3号)。
町村議選の法定制限額(選挙人名簿登録者12,000人・議員定数12人の例)
市議会議員選挙(指定都市以外)は人数割額501円・固定額220万円です。町村は1人あたりの単価が高く、固定額が小さいという組み方になっています。なお施行令127条2項が定める人数割額の頭打ち(上限)は、参議院選挙区選出議員・知事・指定都市以外の市議会議員・市長・指定都市の議会の議員の選挙について置かれており、町村の議会の議員の選挙には頭打ちの規定がありません。有権者数が多い町村では人数割額がそのまま積み上がります。100円未満の端数は100円に切り上げます(法194条2項)。実際の額は選挙管理委員会が告示するので、必ずそちらで確認してください。
この上限を超えて支出すれば公職選挙法違反です。選挙が終わったあとには収支報告書の提出が必要で、領収書も添えます。公費で払われた分の扱いを含めて、報告書の書き方は選挙管理委員会が配る手引きに従ってください。事務所費と人件費の相場感は選挙事務所の費用の記事で、資金が足りない場合の考え方は選挙資金の記事で扱っています。
町村ならではの注意点
供託金が没収されるラインは、定数が少ないぶん上がる
没収点の計算式は市議選と同じ「有効投票総数 ÷ 議員定数 × 1/10」です。公職選挙法第93条1項3号は、この数に「達しないとき」に供託物が自治体に帰属すると定めています。つまり、ちょうど届けば没収されません。ただし町村は議員定数が少ないため、同じ計算式でも一票あたりの重みが変わります。
町議会議員選挙の没収点(有効投票5,000票・議員定数14人の例)
5,000÷14=357.14…の10分の1は35.71…なので、36票に達すれば供託金15万円は全額返還され、公費負担も受けられます。町村の選挙は有権者数そのものが少ないため、ラインの絶対数も小さくなります。※実際の有効投票総数は選挙が終わるまで確定しません。あくまで試算の例です。
5日間しかない
市議選の7日間に対して、町村は5日間です。準備が整っていないまま告示日を迎えると、挽回する時間がありません。ポスターの掲示、ビラの証紙貼り、選挙カーの巡回ルート。これらを告示前に段取りしておく重要度が、市議選より高くなります。
1,600枚のビラに証紙を貼る作業は、証紙が交付される告示日より前には始められません。5日間のうちの初日を証紙貼りに費やすのか、手伝ってくれる人を確保しておくのか。ここは事前に決めておくべき点です。
無投票になる場合の扱い
町村議会議員選挙では、立候補者が定数以下で無投票当選になることがあります。この場合、公費負担の算定期間の終わりの日が変わります。
施行令第109条の4は、選挙カーの公費の限度額を「候補者の届出のあった日から当該選挙の期日の前日までの日数」で計算すると定めていますが、同条2項2号ロのかっこ書きで、公職選挙法第100条の規定により投票を行わないこととなった場合には、投票を行わない旨の告示の日までとすると読み替えるよう定めています。この読み替えは同条4項にも及びます。
つまり無投票になると、5日ぶんの枠を前提に組んだ契約が、算定上はごく短い期間で締められることになります。町村の条例は国の制度に準じて定められるため、同じ考え方をとる自治体が多いと考えられますが、具体的な扱いは条例と選挙管理委員会の運用によります。定数割れが見込まれる町村で立候補を考えている場合は、契約を結ぶ前にこの点を確認しておいてください。
よくある質問
町議選に供託金がなかったというのは本当ですか?
本当です。2020年(令和2年)6月の公職選挙法改正で導入されるまで、町村議会議員選挙に供託金はありませんでした。同年12月の施行以降、15万円の供託が必要になっています。あわせてビラの頒布が解禁され、公費負担の対象も市と同じ範囲に広がりました。
ビラは何枚まで作れますか?
町村議会議員選挙は1,600枚が上限です。町村長選挙は5,000枚、市議会議員選挙は4,000枚と、それぞれ数字が違います。上限を超えて作った分は公費負担の対象外となり、全額自己負担になります。また、ビラには選挙管理委員会が交付する証紙を貼る必要があります。
町に公費負担の条例があるか、どう調べればいいですか?
選挙管理委員会に直接聞くのが確実で、いちばん早いです。「選挙運動費用の公費負担に関する条例はありますか」と尋ねてください。あわせて、ポスター掲示場の数と議員定数も聞いておくと、公費の枠が計算できます。私たちにご相談いただければ、こちらでお調べすることもできます。
市議選の記事に書いてある金額をそのまま使えますか?
使えません。日数が5日と7日で違い、ビラの枚数上限も1,600枚と4,000枚で違います。報酬を払える人数も1日7人と9人で違い、法定制限額の計算式も別の数字です。ポスターの単価は掲示場の数で決まるため、自治体ごとに変わります。市議選の費用については市議会議員選挙の費用の記事で、県議選や市長選まで含めた選挙種別の比較は選挙の費用相場の記事で解説していますが、町村の方は数字をそのまま流用しないでください。
町議会議員になる条件は市議会議員と同じですか?
同じです。満25歳以上で、引き続き3か月以上その町村に住所があること。この2つが要件です。詳しくは議員になるための条件をまとめた記事をご覧ください。立候補の手続きも基本的に共通です。
軽トラックや軽バンを選挙カーにできますか?
乗車定員10人以下で車両総重量3.5トン未満であれば使えます(公職選挙法第141条6項)。2026年1月1日以後に告示される選挙では、この2つの条件だけで判定します。改正前は施行令第109条の3が車種を細かく限定していて、町村議会議員選挙と町村長選挙では、乗用自動車のほかに小型貨物自動車も使えるという特例がありました。この条文は削除され、全選挙で共通の基準になっています。使える台数は候補者1人につき1台のままです。なお公費で払われるのは車両の借入れ・燃料・運転手の報酬の3つで、看板やスピーカーの取付費用は車種にかかわらず自己負担です。
ポスターは幅40cmで作ってよいのですか?
2026年1月1日以後に告示される選挙なら、長さ42cm・幅40cm以内で作れます(公職選挙法第143条13項)。改正前は幅30cmまででした。掲示場の区画は縦・横それぞれ42cm以上と定められているため(法144条の2第6項、町村議会議員選挙には同条10項で準用)、幅40cmのポスターは収まります。ただし、以前のテンプレートが旧規格のままになっていないか、印刷会社への発注前に確認してください。公費の単価(586円88銭)はこの改正で変わっていないため、同じ金額で使える面積が増えたことになります。
手伝ってくれる人に日当を払えますか?
払える相手が限られます。選挙運動のための事務員、車上運動員、手話通訳者・要約筆記者、労務者に限られ、一般の選挙運動員に報酬を払うと買収にあたります。国の基準では事務員が1日15,000円以内、車上運動員などが1日20,000円以内、労務者が1日10,000円以内です。町村議会議員選挙では、報酬を支給できるのは1日7人まで(施行令129条3項7号)。市議会議員選挙の9人より少ない枠です。事務員と車上運動員は、使う前に選挙管理委員会への届出が必要です。実際に適用される額は自治体によって異なるため、選挙管理委員会の告示で確認してください。
町に公費負担の条例があれば、持ち出しは0円になりますか?
公費の対象は選挙カー・ポスター・ビラの3項目で、それぞれに限度額があります。限度額の範囲内で発注すれば、この3項目の持ち出しを0円に近づけられます。ただし供託金15万円は法律が義務づけているお金で、公費の対象ではありません。得票が没収点に達すれば全額返還されます。また事務所費、人件費、通信費は公費の対象外です。亘理町の限度額で試算すると公費の枠は約57万円から約71万円ですが、額は自治体の条例によって異なります。
まとめ
町村議会議員選挙は、供託金15万円と、すべての公職選挙のなかで最も入口が広い選挙です。2020年の法改正で公費負担の対象も市と同じ3項目に広がり、2026年1月からは選挙カーとポスターの規格も全選挙で共通になりました。
- 供託金は15万円——市議選の半分。得票が没収点に達すれば全額返還されます
- 選挙運動期間は5日間——市議選より2日短く、選挙カーの公費枠も日数ぶん変わります
- ビラの上限は1,600枚——市議選の4,000枚と混同しないでください。2種類以内で、証紙が必要です
- 通常葉書は800枚まで無料——条例がなくても使える制度です
- 新しい規格で発注する——ポスターは幅40cm、選挙カーは定員10人以下・総重量3.5トン未満
- 報酬を払えるのは1日7人まで——市議選の9人より少ない枠です。相手の立場も限られます
- 公費負担には町村の条例が必要——導入していない自治体では全額自己負担です
- 掲示場の有無も条例で決まる——あれば1か所1枚、なければ500枚まで自分で貼ります
ポスターとビラは持ち出し0円。街宣車の手配まで、まとめてお任せください
0円選挙.COMは、ポスターとビラを公費負担の範囲内で制作します。候補者の持ち出しは0円です。街宣車(選挙カー)の手配も、車両・燃料・運転手の契約から選挙管理委員会への届出まで行います。町村ごとに異なる条例の限度額を調べたうえでご提案します。政治現場10年以上の実務者と、京都大学大学院で研究を続けるメンバーが対応します。相談は無料です。
出典
- 小布施町「町村の選挙における公営拡大と供託金導入について」 https://www.town.obuse.nagano.jp/docs/61233.html
- 亘理町「選挙運動費用の公費負担(選挙公営)制度」 https://www.town.watari.miyagi.jp/town/detail.php?content=1277
- 総務省「公職選挙法の一部を改正する法律概要(町村議会議員選挙及び町村長選挙における選挙公営の拡大)」 https://www.soumu.go.jp/main_content/000693361.pdf
- 浦安市「選挙運動費用の公費負担」(市との比較) https://www.city.urayasu.lg.jp/shisei/senkyo/senkyo/1003176.html
- 福岡法務局「公職選挙法による供託手続について」 https://houmukyoku.moj.go.jp/fukuoka/page000001_00724.pdf
- e-Gov法令検索「公職選挙法」(第33条5項・第92条・第93条・第139条・第141条・第142条・第143条・第144条・第144条の2・第144条の4の2・第194条・第197条の2) https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC1000000100
- e-Gov法令検索「公職選挙法施行令」(第109条の4・第109条の8・第110条の4・第127条・第129条、および削除された第109条の3) https://laws.e-gov.go.jp/law/325CO0000000089
- 総務省「公職選挙法の一部を改正する法律要綱(選挙運動に関する規格の簡素化)」 https://www.soumu.go.jp/main_content/001002901.pdf
- 総務省「公職選挙法の一部を改正する法律要綱(ポスターの品位保持)」 https://www.soumu.go.jp/main_content/001002897.pdf
- 総務省「公職選挙法の一部改正について(令和7年)」 https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/news/touhyou/shikkokeihi/index_2025.html