選挙公営制度とは?公費負担の対象・上限額を選挙別に完全解説

選挙にはお金がかかる。そう聞いて立候補をあきらめかけている方に、まず知ってほしい制度があります。選挙公営制度です。選挙カー、ポスター、ビラ。この3つは、条件を満たせば自治体が業者へ直接支払います。候補者の財布からは出ていきません。
ただし、対象になる範囲も上限額も、選挙の種類と自治体によって変わります。この記事では、選挙公営制度の中身を根拠条文と実際の限度額で整理し、あなたの選挙でいくらまで公費が使えるのかを計算できるツールも用意しました。読み終えたとき、「自分の場合はここまでカバーできる」という数字が手元に残ります。
この記事でわかること
結論:選挙公営制度は3つの層でできている
選挙公営制度は、ひとかたまりの制度ではありません。「法律で当然に無料になるもの」「自治体の条例があれば無料になるもの」「そもそも公費の対象外のもの」の3つが重なってできています。この区別を知らないまま準備すると、公費で済むはずの費用を自腹で払うことになります。
そして、あなたが地方議員を目指すなら、いちばん金額の大きい選挙カー・ポスター・ビラの3項目はすべて2番目の層、つまり「条例があれば無料」に入ります。国が全国一律で保証しているわけではありません。ここが最初の分かれ道です。
- 選挙公営制度は「お金のかからない選挙」と「候補者間の機会均等」のための制度です(総務省)
- 地方選挙の選挙カー・ポスター・ビラは、自治体の条例があってはじめて公費負担の対象になります
- 公費は候補者に支払われません。候補者と契約した業者へ、自治体が直接支払います
- 供託金が没収されると、公費負担は一切受けられません。かかった費用は全額自己負担になります
- 上限額は自治体の条例で決まるため、同じ市議会議員選挙でも金額は地域によって異なります
- 2026年1月1日から、選挙カーとポスターの規格が全選挙で統一されました。ポスターは長さ42cm・幅40cm以内、選挙カーは乗車定員10人以下・車両総重量3.5トン未満です
選挙公営制度とは何か
総務省は選挙公営制度を、「お金のかからない選挙のため、また、候補者間の選挙運動の機会均等を図るために採用されている制度」と説明しています。資産の多い人だけが選挙に出られる状態を避ける。これが制度の目的です。
公職選挙法そのものにも、同じ趣旨が書かれています。同法は「選挙運動の期間、主体、方法、費用について制限を加える一方、可能な限り選挙公営を拡充して、いわゆる金のかからない選挙の実現に資し、もって選挙の公正を確保する」という考え方に立っています。制限をかけるかわりに、必要な費用は社会が持つ。そういう設計です。
お金は候補者ではなく、業者に支払われる
ここを誤解している方が非常に多いので、先に書きます。公費は候補者の口座に振り込まれません。候補者が業者と有償契約を結び、その契約を選挙管理委員会に届け出る。選挙が終わったあと、業者が自治体に請求し、自治体が業者へ直接支払う。この流れです。
浦安市も「費用は、候補者に支払われるのではなく、あらかじめ候補者と契約した業者が、当該選挙管理委員会に請求する仕組み」と明記しています。つまり、候補者が立て替えて後から精算する制度ではありません。資金がなくても動けるように設計されている、という点が重要です。
公費が支払われるまでの流れ
- 自治体に公費負担の条例があるか確認する選挙管理委員会に「選挙運動費用の公費負担に関する条例はありますか」と聞けば教えてもらえます。あわせてポスター掲示場の数も確認してください。上限額の計算に必要です。
- 業者と有償契約を結ぶ選挙カー(車両・燃料・運転手)、ポスター作成、ビラ作成。それぞれ別の契約になります。無償で借りたものや、自分の車を使う場合は公費の対象になりません。
- 契約届出書を選挙管理委員会に提出する契約書の写しを添えて提出します。立候補の届出前に契約した場合は、届出後ただちに提出します。この届出を出し忘れると、上限内の契約でも公費は支払われません。
- 作成枚数・使用実績の確認申請をするポスターとビラは、法定枚数の範囲内であることを選挙管理委員会に確認してもらう必要があります。燃料代も同様に確認を受けます。
- 選挙後、業者が自治体に請求する供託物の没収が確定した後の支払いになるため、契約の時点で業者にその旨を伝えておいてください。亘理町も「支払い時期は選挙期日後で、供託物没収関係が確定した日以降」と案内しています。
公費負担の対象になるもの・ならないもの
総務省が公表している「選挙公営の一覧」から、地方選挙の部分を整理したのが次の表です。◎は法律で当然に公営、△は自治体の条例があれば公営、▲は公営の対象外を意味します。
| 項目 | 都道府県知事 | 都道府県議会議員 | 市町村長 | 市町村議会議員 |
|---|---|---|---|---|
| 演説会の公営施設使用 | 公営 | 公営 | 公営 | 公営 |
| 通常葉書の交付(郵便料金) | 公営 | 公営 | 公営 | 公営 |
| ポスター掲示場の設置 | 公営 | 条例次第 | 条例次第 | 条例次第 |
| 選挙公報の発行 | 公営 | 条例次第 | 条例次第 | 条例次第 |
| 選挙運動用自動車の使用 | 条例次第 | 条例次第 | 条例次第 | 条例次第 |
| 選挙運動用ポスターの作成 | 条例次第 | 条例次第 | 条例次第 | 条例次第 |
| 選挙運動用ビラの作成 | 条例次第 | 条例次第 | 条例次第 | 条例次第 |
| 通常葉書の作成(印刷代) | 対象外 | 対象外 | 対象外 | 対象外 |
| 選挙事務所用の立札・看板の作成 | 対象外 | 対象外 | 対象外 | 対象外 |
| 選挙カーに取り付ける看板の作成 | 対象外 | 対象外 | 対象外 | 対象外 |
| 新聞広告 | 公営 | 対象外 | 対象外 | 対象外 |
| 政見放送・経歴放送 | 公営 | 制度なし | 制度なし | 制度なし |
この表から読み取ってほしいことは2つあります。
1. 意外と多くのものが「対象外」である
通常葉書は郵便料金こそ無料ですが、印刷代は地方選挙では公費の対象外です。選挙事務所の看板、選挙カーに取り付ける看板も同じく対象外。ここは候補者の負担として残ります。選挙事務所そのものの家賃も当然ながら公費の対象外です。事務所費については選挙事務所の費用の記事で詳しく整理しています。
2. 地方選挙の主要3項目は、すべて条例が前提
公職選挙法は、選挙カーについて第141条第8項、ビラについて第142条第11項、ポスターについて第143条第15項で、いずれも「地方公共団体は……条例で定めるところにより……無料とすることができる」と規定しています。「しなければならない」ではなく「できる」です。
実務上、都道府県・市・特別区ではほぼ条例が整備されています。注意が必要なのは町村です。町村議会議員選挙と町村長選挙が公営の対象になったのは2020年(令和2年)6月の公職選挙法改正からで、それ以前は制度そのものがありませんでした。改正後も、条例を制定するかどうかは各町村の判断です。町村での立候補を考えている方は、真っ先にここを確認してください。町村の事情は町議会議員選挙の費用の記事にまとめています。
「うちの町に公費負担の条例はありますか」。この一言を選挙管理委員会に聞くだけで、あなたの選挙の前提が決まります。条例がなければ、選挙カーもポスターもビラも全額自己負担です。条例があれば、そこから先は上限額の話になります。
2026年1月、選挙カーとポスターの規格が変わりました
公費負担の「金額」を見る前に、公費負担の「対象そのもの」が変わったことをお伝えします。令和7年法律第20号「公職選挙法の一部を改正する法律(選挙運動に関する規格の簡素化)」です。2025年4月2日に公布され、2026年1月1日から施行されています。
変わったのは単価ではなく規格です。公費で借りられる車の条件と、公費で作れるポスターの寸法が、選挙の種類ごとにバラバラだった状態から全選挙共通に整理されました。これから立候補する方は、新しい規格を前提に見積りを取ってください。
2026年1月1日以後に公示・告示される選挙から
- 選挙カーの規格が全選挙で乗車定員10人以下・車両総重量3.5トン未満に統一されました(公職選挙法第141条第6項)
- ポスターの規格が全選挙で長さ42cm・幅40cm以内に統一されました(同法第143条第13項)。市議会議員選挙・町村議会議員選挙では、これまで幅30cmまででした
- 個人演説会告知用ポスターは廃止されました(改正前の同法第143条第1項第4号の3)
- 公費負担の単価と限度額は、この改正では変わっていません
選挙カー:借りられる車の幅が広がった
改正前、選挙カーに使える車は公職選挙法施行令第109条の3が細かく限定していました。乗車定員10人以下の乗用自動車、乗車定員4人以上10人以下の小型自動車、四輪駆動式で車両重量2トン以下の自動車の3つです。しかも、上面・側面・後面の全部または一部が構造上開放されている車(オープンカーの類)は除かれていました。そして小型貨物自動車を使えるのは、町村議会議員選挙と町村長選挙だけでした。
改正後は、この条文ごと削除されました。いまは公職選挙法第141条第6項の一文だけです。乗車定員10人以下で、車両総重量3.5トン未満。この2つを満たせば、選挙の種類を問わず選挙カーにできます。
| 項目 | 改正前(2025年12月31日までに告示された選挙) | 現行(2026年1月1日以後に告示される選挙) |
|---|---|---|
| 選挙運動用自動車の規格 | 選挙の種類ごとに施行令で限定。乗用自動車/小型自動車(定員4〜10人)/四輪駆動2トン以下。市議会議員選挙では小型貨物自動車は不可 | 全選挙共通で、乗車定員10人以下・車両総重量3.5トン未満 |
| 選挙運動用ポスターの寸法 | 長さ42cm・幅30cm(改正前の第144条第4項) | 全選挙共通で、長さ42cm・幅40cm以内 |
| 個人演説会告知用ポスター | 長さ42cm・幅10cm。使えるのは衆議院小選挙区・参議院選挙区・都道府県知事の選挙のみ | 廃止 |
| 使える台数 | 候補者1人につき自動車1台(または船舶1隻) | 変更なし 候補者1人につき1台 |
| 公費負担の単価・限度額 | ハイヤー方式64,500円/日ほか | 変更なし この改正では単価は動いていません |
市議会議員選挙を考えている方にとっては、車両総重量3.5トン未満のバンや軽トラックも選べるようになったことになります。荷台に人が立てる形の車を検討していた方は、以前は町村の選挙でしか使えませんでした。いまはその制限がありません。
ただし、公費で支払われる費目は広がっていません。車両の借入れ・燃料・運転手の報酬の3つだけです。看板やスピーカーを取り付ける費用は、車種が何であれ自己負担になります。選挙カーの手配と装備の実務は選挙カーの公費負担の記事で詳しく扱っています。
ポスター:市議選・町村議選でも幅40cmまで使える
こちらのほうが、地方議員を目指す方への影響は大きいかもしれません。
改正前、選挙運動用ポスター(いわゆる5号ポスター)の寸法は長さ42cm・幅30cmでした。一方、衆議院小選挙区・参議院選挙区・都道府県知事の選挙では、これとは別に「個人演説会告知用ポスター」(長さ42cm・幅10cm)を掲示でき、5号ポスターと合わせて1枚に作ることも認められていました。つまり国政選挙と知事選だけが、実質的に幅40cmを使えていたわけです。
改正はこの差をなくしました。告知の記載があるかどうかにかかわらず、全選挙で長さ42cm・幅40cm以内。市議会議員選挙も町村議会議員選挙も同じです。ポスター掲示場の区画は縦・横それぞれ42cm以上と定められている(第144条の2第6項、地方議員選挙には同条第10項で準用)ため、幅40cmのポスターはそのまま収まります。
市議会議員選挙のポスター:掲載できる面積の変化
横幅が3分の1広がります。顔写真を大きくするか、政策の文字を増やすか。新人候補にとっては、名前を覚えてもらう面積が増えたことになります。ただし公費の限度額は変わっていません。面積が増えたぶん印刷費が上がって限度額を超えれば、超えた分は自己負担です。
ポスターの中身にも、2025年5月からルールが加わっています
規格の改正とは別に、その前年の改正(令和7年法律第19号、2025年5月2日施行)でポスターの中身にも義務が入りました。公職選挙法第144条の4の2です。
- 掲示場に貼るポスターには、候補者の氏名を選挙人に見やすいように記載しなければならない(第1項)
- 他人や他の政党の名誉を傷つける内容、善良な風俗を害する内容、特定の商品の広告その他営業に関する宣伝など、ポスターとしての品位を損なう内容を記載してはならない(第2項)
営業に関する宣伝については罰則もあります。第235条の3第2項が100万円以下の罰金を定めています。ポスターの制作費を協賛で埋めようとして企業名やロゴを載せる、という発想は成り立ちません。裏を返せば、ポスターの費用は公費負担で組み立てるのが筋だということです。
令和7年法律第20号の附則第2条は、改正後の規定を「施行の日以後その期日を公示され又は告示される選挙」に適用すると定めています。2025年12月31日までに告示された選挙は、従前の例によります。これから立候補する選挙は、新しい規格が前提です。選挙管理委員会の手引きや印刷業者のテンプレートが旧規格(幅30cm)のまま残っていないか、発注前に必ず確認してください。不安な場合は選挙管理委員会に「今回の選挙のポスターは幅40cmで作ってよいか」と直接聞くのが確実です。
公費負担の上限額はいくらか
ここからが本題です。上限額は自治体の条例で定めますが、多くの自治体は国の政令(公職選挙法施行令)の基準額をそのまま採用しています。以下は政令の基準額と、それを採用している自治体の実例です。
選挙運動用自動車:2つの契約方式から選ぶ
選挙カーの公費負担には、ハイヤー方式と個別契約方式の2つがあります。同じ日に両方を使うことはできず、日ごとにどちらかを選びます。使える車は前の章のとおり、乗車定員10人以下・車両総重量3.5トン未満のものです。
方式A:ハイヤー方式(タクシー・ハイヤー事業者と運送契約を結ぶ)
車両・燃料・運転手がまとめて1つの契約になります。手配の手間は少ないですが、事業者側の見積りが上限を超えると差額は自己負担です。
方式B:個別契約方式(車両・燃料・運転手をそれぞれ契約する)
7日間なら254,100円が限度額です。金額はハイヤー方式より小さくなりますが、レンタカー業者・ガソリンスタンド・運転手と3本の契約を結び、それぞれ届け出る必要があります。燃料代だけは日額ではなく総枠で見ます。施行令第109条の4第2項ロは「7,700円に届出の日から選挙期日の前日までの日数を乗じて得た金額に達するまでの部分」と定めているため、7日間なら53,900円の枠内で、よく走った日とそうでない日を通算できます。浦安市も限度額を「53,900円(7,700円×7日)」と総額で公表しています。
この4つの単価は、公職選挙法施行令第109条の4に定められた国政選挙の基準額と一致します。京都府の条例も、かすみがうら市も、亘理町も、同じ額を採用しています。ただし採用するかどうかは条例次第であり、独自の額を定めている自治体もあります。
亘理町は「レンタカー業者から借入れする場合、車両本体のみが公費負担の対象であるため、レンタカー業者の基本料金以外の看板費用、スピーカー等の付帯料金は対象になりません」と明示しています。選挙カーらしく仕立てる費用は、公費の外側です。見積りを取るときは、車両本体と付帯品を分けて出してもらってください。
選挙運動用ポスター:掲示場の数で単価が決まる
ポスターの公費負担は、少し変わった計算をします。掲示場の数が少ない自治体ほど、1枚あたりの単価が高くなる仕組みです。版下作成などの固定費を、枚数で割り戻す考え方になっているためです。なお、ここで計算するのは金額だけで、寸法(長さ42cm・幅40cm以内)は規格の章で見たとおり全選挙共通です。
ポスター1枚あたりの作成単価の上限(掲示場が500か所以下の場合)
掲示場が500か所を超える場合は、586.88円の部分が「293,440円+30.73円×(掲示場数−500)」に置き換わります。
実際の数字で見てみます。浦安市は掲示場が227か所で、単価の上限は1,981円、作成費用の限度額は449,687円と公表しています。亘理町は掲示場が104か所で、単価3,628円、限度額377,312円。掲示場が半分以下の亘理町のほうが、1枚あたりの単価は1.8倍高いことがわかります。
| 自治体 | 掲示場の数 | 1枚あたりの単価上限 | 作成費用の限度額 |
|---|---|---|---|
| 浦安市(市議会議員選挙) | 227か所 | 1,981円 | 449,687円 |
| 亘理町(町議会議員選挙) | 104か所 | 3,628円 | 377,312円 |
| かすみがうら市(市議会議員選挙) | 139か所 | 586.88円 | 163,153円 |
かすみがうら市だけ、数字の性質が違うことに気づいたでしょうか。同市の条例は固定分の316,250円を加えず、586円88銭に「掲示場数×2」を掛けた額を限度額としています。同じ市議会議員選挙でも、条例の書き方ひとつで限度額が3倍近く変わる。これが「自治体によって異なる」の実態です。
選挙運動用ビラ:単価は一律、枚数が選挙で変わる
ビラの作成単価は1枚8円38銭。ここは選挙の種類にかかわらず同じです。変わるのは作れる枚数、つまり法定枚数のほうです。公職選挙法第142条第1項が選挙ごとに定めています。
| 選挙の種類 | 通常葉書 | ビラの法定枚数 | ビラ作成の公費限度額 |
|---|---|---|---|
| 都道府県議会議員選挙 | 8,000枚 | 16,000枚 | 134,080円 |
| 指定都市の議会議員選挙 | 4,000枚 | 8,000枚 | 67,040円 |
| 市・特別区の議会議員選挙 | 2,000枚 | 4,000枚 | 33,520円 |
| 町村議会議員選挙 | 800枚 | 1,600枚 | 13,408円 |
| 指定都市の市長選挙 | 35,000枚 | 70,000枚 | 532,000円2段階 |
| 市長選挙(指定都市以外) | 8,000枚 | 16,000枚 | 134,080円 |
| 町村長選挙 | 2,500枚 | 5,000枚 | 41,900円 |
ビラの単価8円38銭が通るのは、作成枚数が5万枚以下の場合です。5万枚を超えると、公職選挙法施行令第109条の8(第109条の7の読替え)により「41万9,000円+5円62銭×5万枚を超える枚数」を作成枚数で割った額が1枚あたりの上限になります。1銭未満の端数は切り上げです。7万枚まで作れる指定都市の市長選挙だけがこの2段階に入り、単価の上限は7円60銭、限度額は532,000円になります。上の表で「2段階」と付けたのがこの行です。市議会議員選挙・町村議会議員選挙はいずれも5万枚を大きく下回るため、8円38銭のままで計算して差し支えありません。
ビラは2種類以内まで作れます。寸法は長さ29.7cm・幅21cm(A4判)以内(公職選挙法第142条第8項)。両面印刷も色刷りもできます。表面には頒布責任者と印刷者の氏名・住所を記載しなければなりません(同条第9項)。法人に印刷を頼んだ場合は、法人の名称と所在地です。そして選挙管理委員会が交付する証紙を1枚ずつ貼らなければ頒布できません(同条第7項)。証紙は告示日に候補者本人が受け取りに行くのが通例で、貼る作業は数千枚分の手仕事になります。ビラの制作と証紙貼りの実務は選挙ビラの印刷の記事で詳しく扱っています。
ビラを配れる方法は4つ。新聞折込みも認められています
ここは以前の版で記述を誤っていたため、条文で訂正します。公職選挙法第142条第6項は、ビラを「新聞折込みその他政令で定める方法」によらなければ頒布できないと定めています。新聞折込みは条文そのものに書かれた方法であり、市議会議員選挙や町村議会議員選挙のビラでも使えます。残りの3つが施行令第109条の6第3号の定める方法で、選挙事務所内・個人演説会の会場内・街頭演説の場所です。
- 新聞折込み——法第142条第6項が明記する方法です。仙台市選挙管理委員会も、市長選挙・市議会議員選挙のビラの頒布方法として新聞折込みを挙げています
- 候補者の選挙事務所内——施行令第109条の6第3号
- 個人演説会の会場内——同号
- 街頭演説の場所——同号
群馬県選挙管理委員会は、各戸への郵送とポスティング(郵便受けへの直接投かん)はできないと案内しています。「業者に委託してのポスティングも、通常、新聞折込みには該当しません」とも明記されています。選挙事務所・個人演説会場・街頭演説の場以外で通行人に手渡しすることもできません。新聞折込みとポスティングは、法律上まったく別の扱いです。混同したまま業者に発注すると、配れないビラが手元に残ります。なお、ビラのデータをウェブサイトに掲載することは選挙運動期間中であれば可能ですが、受け取った人がそれを印刷して配ることはできません。
同じ市議選でも限度額が違う理由:条例の3つの変数
ここまでの金額は、すべて国の政令(公職選挙法施行令)の基準額です。しかし、あなたの選挙に適用されるのは政令ではありません。あなたの自治体の条例です。政令は条例の手本にすぎず、条例がその手本どおりに書かれているとは限りません。
前の章で、浦安市の限度額が449,687円、かすみがうら市が163,153円と、同じ市議会議員選挙で3倍近く違うことを見ました。なぜそうなるのか。条例を読み比べると、違いは3つの変数に集約されます。この3つを選挙管理委員会に確認すれば、あなたの限度額は確定します。
条例ごとに変わる3つの変数
- 変数1:単価の基準額——政令と同額か、改定前の古い額のままか
- 変数2:作成枚数の上限——ポスターを掲示場の数の何倍まで作れるか(同数・1.2倍・2倍の例があります)
- 変数3:限度額の算式——固定分の316,250円を足す書き方か、足さない書き方か
変数1:政令の単価は2025年6月に上がりました。条例は追いついていますか
ここが見落とされがちな点です。選挙公営の基準額は令和7年政令第227号(2025年6月28日施行)で引き上げられました。条文を改正前後で突き合わせると、こう動いています。
| 項目 | 改定前(〜2025年6月27日) | 現行の政令基準額 |
|---|---|---|
| ポスター(掲示場1か所あたり・500か所以下) | 541円31銭 | 586円88銭 |
| ポスター(掲示場500か所超の基礎額) | 270,650円+28円35銭 | 293,440円+30円73銭 |
| ポスターの固定分 | 316,250円 | 変更なし 316,250円 |
| ビラ(1枚・5万枚以下) | 7円73銭 | 8円38銭 |
| 通常葉書(1枚・国政選挙) | 7円95銭 | 8円62銭 |
| 選挙運動用自動車の4つの単価 | 64,500/16,100/7,700/12,500円 | 変更なし 同額 |
政令が変わっても、条例は自動では変わりません。各自治体が条例改正の議案を議会に出して、議決を経る必要があります。東京都文京区の選挙管理委員会事務局が議会に出した資料が、この構造をそのまま示しています。改正理由は「公職選挙法施行令の一部改正により……公費負担額が引き上げられたことに伴い」。新旧対照表では、ビラが七円七十三銭から八円三十八銭へ、ポスターが五百四十一円三十一銭から五百八十六円八十八銭へと書き換えられています。
注目してほしいのは、同資料の付則です。改正後の規定は「施行日以後その期日を告示される選挙について適用し、施行日の前日までにその期日を告示された選挙については、なお従前の例による」と定めています。つまり、告示日の時点で生きている条例の額が、あなたの上限額です。条例改正が間に合わなかった自治体では、旧額で計算されます。
「ビラの単価は8円38銭ですか」と単価を名指しで聞いてください。「政令どおりです」という答えだけでは、条例が改定後の政令に合わせてあるのか、改定前の政令に合わせたまま止まっているのかが判別できません。1枚65銭の差は、4,000枚で2,600円。金額としては小さいですが、この質問に即答できる自治体かどうかで、見積りの詰め方が変わります。
変数2:ポスターは掲示場の数の何倍まで作れますか
公費で作れるポスターの枚数は、掲示場の数と同数が基本ではありません。自治体によって倍率が違います。国政選挙では政令が「掲示場の数に2を乗じて得た数」と定めており、これに準じた条例もあります。実例を並べます。
| 自治体 | 掲示場の数 | 作成枚数の上限 | 1枚あたりの単価上限 | 作成費用の限度額 |
|---|---|---|---|---|
| 浦安市(市議会議員選挙) | 227か所 | 掲示場数と同数 | 1,981円 | 449,687円 |
| 志木市(市議会議員選挙) | 91か所 | 1.2倍(110枚) | 4,063円 | 446,930円 |
| かすみがうら市(市議会議員選挙) | 139か所 | 2倍(278枚) | 586円88銭 | 163,153円 |
志木市に注目してください。掲示場は91か所で、浦安市の4割しかありません。それでも限度額はほぼ同額の446,930円です。固定分の316,250円を91で割るため1枚あたりの単価が4,063円まで上がり、さらに1.2倍の110枚まで作れるからです。
志木市の限度額(掲示場91か所・1.2倍まで作成可の場合)
1円未満の端数は切り上げます。同じ計算をかすみがうら市の条例でやると、固定分を足さずに586円88銭×139×2となり、163,153円にとどまります。掲示場の数ではなく、条例の書き方が限度額を決めていることがわかります。
変数3:掲示場が設置されない選挙もあります
ポスター掲示場そのものが、地方選挙では義務ではありません。公職選挙法第144条の2第8項は、都道府県議会議員選挙と市町村の議会議員・長の選挙について、「条例で定めるところにより……設けることができる」と書いています。設置する場合の総数は1投票区につき5か所以上10か所以内です(同条第9項)。
さらに同法第144条の4は、これとは別に「任意制ポスター掲示場」を認めています。こちらの数は1投票区につき1か所以上。つまり投票区の数だけあれば足ります。掲示場が少ない自治体では、1枚あたりの単価は上がりますが、作れる枚数は減ります。掲示場の数を聞かずに限度額を計算することはできません。ポスターの規格と制作費の実務は選挙ポスターの公費負担の記事で詳しく扱っています。
自分の自治体の条例を探す手順
- 例規集を検索する「(自治体名) 例規集」で、その自治体の条例集にたどり着けます。多くの自治体が全文を公開しています。検索窓があれば「公費負担」または「公営」と入れてください。
- 条例名の型から当てるよく使われるのは次の2つの型です。「◯◯市議会議員及び◯◯市長の選挙における選挙運動の公費負担に関する条例」、「◯◯市選挙運動用自動車の使用等の公営に関する条例」。自動車・ポスター・ビラが別々の条例になっている自治体もあります。
- 別表を見る単価と枚数は、条文本体ではなく末尾の別表に書かれていることが多いです。ここに「586円88銭」「8円38銭」といった数字が並びます。旧額のままなら「541円31銭」「7円73銭」が見えます。
- 選挙管理委員会に電話で確認する条例が見つかっても、掲示場の数は条例に書かれていません。選挙のたびに告示されるものだからです。電話で確認してください。市区町村の選挙管理委員会は、役所の総務課や議会事務局に併設されていることが多く、直通番号が公表されています。
- 公費負担の条例はありますか。自動車・ポスター・ビラのうち、どれが対象ですか
- ポスター掲示場は何か所ですか。前回の選挙の数でも構いません
- ポスターは掲示場の数の何倍まで公費で作れますか(同数・1.2倍・2倍など)
- ビラの単価は1枚8円38銭ですか。ポスターは掲示場1か所あたり586円88銭ですか
- 無投票になった場合、各項目はどう扱われますか
この5つの答えがそろえば、あなたの選挙の公費負担は数字として確定します。あとは、その金額の範囲内で発注できる業者を探すだけです。私たちにご依頼いただく場合、この条例の取り寄せと限度額の確定から着手します。見積りを出す前に条例を読む。順番を逆にすると、限度額を超えた分が持ち出しになるためです。
公費負担 上限額チェッカー
ここまでの計算式を、そのまま入力できる形にしました。選挙の種類、ポスター掲示場の数、ポスターの作成枚数の倍率を入れると、公費負担の上限額の目安が出ます。掲示場の数と倍率がわからない場合は、選挙管理委員会に電話すれば教えてもらえます。選挙費用の全体像から試算したい方は選挙費用シミュレーションの記事もあわせてご覧ください。
公費負担 上限額チェッカー
選挙運動用自動車・ポスター・ビラの3項目について、公費でまかなえる上限額の目安を計算します
全額自己負担になってしまう4つの落とし穴
制度があっても、条件を外すと1円も出ません。実務でつまずきやすいのは次の4つです。
落とし穴1:供託物が没収されると、公費はゼロになる
これが最大の分かれ目です。公職選挙法第141条第7項ただし書は、公費負担を「供託物が国庫(自治体)に帰属することとならない場合」に限ると定めています。京都府の条例も、浦安市も、亘理町も、同じ条件を置いています。
つまり、得票が供託物没収点に届かなかった候補者は、選挙カーもポスターもビラも全額自己負担です。しかも請求できないと分かるのは選挙が終わったあと。この構造を知らずに動くのは危険です。
議会議員選挙の供託物没収点(有効投票総数6万票・議員定数30人の市の例)
首長選挙は割り算がなく、有効投票総数の10分の1が基準になります。供託金の詳細は供託金の記事で解説しています。
裏を返せば、この票数を超えれば供託金も戻り、公費負担も受けられます。落選しても構いません。基準は得票数だけです。詳しくは選挙の供託金の記事で選挙種別ごとに整理しています。
落とし穴2:契約届出を出し忘れる
業者と契約するだけでは公費は出ません。契約書の写しを添えた届出書を、選挙管理委員会に提出する必要があります。選挙カー、ビラ、ポスターでそれぞれ様式が分かれています。届出前に契約した場合は、立候補の届出後ただちに提出します。
告示日は書類が集中し、候補者本人も忙しくなります。ここで抜ける事故がいちばん多い。事前審査の段階で選挙管理委員会に様式をもらい、記入まで済ませておくのが確実です。手続き全体の流れは立候補の手続きの記事にまとめています。
落とし穴3:上限を超えた分は、静かに自己負担になる
公費負担は「限度額を定額で支払う制度ではなく、限度額の範囲内で実際に要した費用を支払う制度」です。亘理町もかすみがうら市も、この点をはっきり書いています。
60万円のポスターを作っても、限度額が45万円なら、公費で出るのは45万円まで。残る15万円は候補者の持ち出しです。見積りを取る段階で、限度額を業者に伝えておいてください。
落とし穴4:対象外の費用を「公費で出る」と思い込む
選挙事務所の看板、選挙カーに取り付ける看板、通常葉書の印刷代、たすき、事務所の家賃、人件費。これらは地方選挙では公費の対象外です。選挙カーの費用も、車両・燃料・運転手だけが対象で、スピーカーや看板の装着費用は含まれません。どこまでが選挙運動として認められるかという線引きは公職選挙法の基本の記事で整理しています。
制度を知らずに自費で払うと
約93万円 選挙カー・ポスター・ビラの費用が、そのまま持ち出しになります。ここに供託金と事務所費が重なると、よく言われる「数百万円」の世界に入っていきます。浦安市の限度額をもとにした試算
公費負担を使い切ると
0円に近づく 同じ3項目を、自治体が業者へ直接支払います。候補者が立て替える必要もありません。残るのは供託金と、事務所や人件費などの対象外の費用だけです。条件は条例・契約届出・供託物没収点の3つ
ポスターとビラは、公費負担の範囲内で制作します。候補者の持ち出しは0円です。街宣車(選挙カー)の手配も行います。車両・燃料・運転手それぞれの契約と、選挙管理委員会への届出まで一括でお引き受けします。私たちはまず、あなたの自治体の条例を取り寄せて限度額を確定させるところから始めます。条例の書き方は自治体ごとに違い、同じ市議会議員選挙でも限度額が数倍変わるためです。詳しくは0円選挙.COMのサービス案内をご覧ください。
よくある質問
選挙公営制度と公費負担は、違う言葉ですか?
ほぼ同じ意味で使われています。「選挙公営制度」は制度全体の正式な呼び名で、選挙公報の発行やポスター掲示場の設置なども含みます。「公費負担」は、そのうち候補者が支出した費用を自治体が肩代わりする部分を指すことが多い言葉です。自治体のウェブサイトでは「選挙運動費用の公費負担(選挙公営)制度」のように併記されていることもあります。
自分の自治体に条例があるか、どう調べればいいですか?
選挙管理委員会に電話するのがいちばん早く、確実です。「選挙運動費用の公費負担に関する条例はありますか」と聞いてください。あわせてポスター掲示場の数と議員定数も確認しておくと、この記事のツールで上限額と没収点の両方が計算できます。自治体の例規集をウェブで検索する方法もあります。「(自治体名)選挙運動用自動車の使用等の公営に関する条例」で見つかることが多いです。条例の探し方と、聞くべき5項目は条例の3つの変数の章にまとめました。
無投票で当選した場合、公費負担はどうなりますか?
項目によって扱いが変わります。亘理町は、ビラとポスターの作成については「無投票の場合でも公費負担の対象となる」と案内しています。一方、選挙運動用自動車については、浦安市が「選挙が無投票となった場合は、届け出日1日のみで計算」と説明しています。無投票が決まった時点で選挙運動が終わるため、車の公費枠も1日分になるという考え方です。扱いは自治体によって異なりますので、選挙管理委員会にご確認ください。
自分の車を選挙カーにすれば、公費で燃料代が出ますか?
燃料の供給契約をガソリンスタンドなどと結び、届け出れば、燃料代は公費負担の対象になります。ただし車両の借入れについては、公職選挙法施行令が「生計を一にする親族のうち、その業務を業として行う者以外の者」との契約を除外しています。自分や同居家族の車をそのまま使う場合、車両代の部分は公費の対象になりません。看板やスピーカーの取付費用も対象外です。
ビラは新聞折込やポスティングで配れますか?
新聞折込は配れます。ポスティングは配れません。公職選挙法第142条第6項が「新聞折込みその他政令で定める方法によらなければ」と定めており、新聞折込みは条文に書かれた方法です。市議会議員選挙や町村議会議員選挙のビラでも使えます。残りの3つは施行令第109条の6第3号の選挙事務所内・個人演説会の会場内・街頭演説の場所です。一方、各戸への郵送とポスティング(郵便受けへの直接投かん)はできません。群馬県選挙管理委員会は「業者に委託してのポスティングも、通常、新聞折込みには該当しません」と明記しています。いずれの方法でも、選挙管理委員会が交付する証紙を1枚ずつ貼る必要があります。
条例の金額が、この記事の政令の基準額と違っていました。どちらで計算されますか?
あなたの自治体の条例の額で計算されます。政令は条例の手本であって、条例を自動で書き換えるものではありません。選挙公営の基準額は令和7年政令第227号(2025年6月28日施行)で引き上げられましたが、条例を改正するには各自治体が議案を議会に出す必要があります。ビラは1枚7円73銭から8円38銭へ、ポスターは掲示場1か所あたり541円31銭から586円88銭へ。条例が旧額のままなら、旧額が上限です。選挙管理委員会には「ビラの単価は8円38銭ですか」と金額を名指しで確認してください。詳しくは条例の3つの変数の章で整理しています。
ポスターは掲示場の数より多く作れますか?
条例の定め方によります。実例では、浦安市が掲示場の数と同数まで、志木市が1.2倍まで(91か所なら110枚)、かすみがうら市が2倍まで(139か所なら278枚)です。国政選挙では政令が「掲示場の数に2を乗じて得た数」と定めており、これに準じた条例もあります。予備のポスターを公費で作れるかどうかが、この倍率で決まります。破損や貼り直しに備えて数枚は余らせたいところですので、発注前に確認してください。この記事の上限額チェッカーでも倍率を選べるようにしています。
町村議会議員選挙でも公費負担は使えますか?
条例があれば使えます。2020年(令和2年)6月の公職選挙法改正で、町村議会議員選挙と町村長選挙も選挙カー・ポスター・ビラが条例による公営の対象になりました。同時に町村議会議員選挙ではビラの頒布(上限1,600枚)が解禁され、供託金15万円が導入されています。ただし条例を制定するかどうかは町村の判断ですので、まず条例の有無を確認してください。詳しくは町議会議員選挙の費用の記事をご覧ください。
ポスターは幅40cmで作ってよいのですか?前回の選挙では30cmでした。
2026年1月1日以後に公示・告示される選挙であれば、幅40cmまで使えます。令和7年法律第20号により、選挙運動用ポスターの規格が全選挙で長さ42cm・幅40cm以内に統一されたためです(公職選挙法第143条第13項)。改正前は、市議会議員選挙や町村議会議員選挙では幅30cmが上限でした。ポスター掲示場の区画は縦・横それぞれ42cm以上と定められているので、幅40cmでも掲示場に収まります。ただし公費負担の限度額は変わっていません。面積が増えたぶん印刷費が上がって限度額を超えれば、超えた分は自己負担です。発注前に、業者のテンプレートが旧規格のままになっていないかご確認ください。
個人演説会告知用ポスターが廃止されたと聞きました。市議会議員選挙への影響はありますか?
市議会議員選挙・町村議会議員選挙への直接の影響はありません。個人演説会告知用ポスター(改正前の公職選挙法第143条第1項第4号の3)は、もともと衆議院小選挙区・参議院選挙区・都道府県知事の選挙でしか使えないものだったためです。地方議会の議員選挙には、この仕組みがありませんでした。今回の改正では、この告知用ポスターを廃止したうえで、その幅10cm分を含めた42cm×40cmを全選挙共通の規格にしています。結果として、地方議会の議員選挙では使えるポスターが大きくなりました。市議会議員選挙の全体像は市議会議員になるにはの記事でも整理しています。
軽トラックやバンを選挙カーにできますか?
車両総重量3.5トン未満で、乗車定員10人以下であれば使えます(公職選挙法第141条第6項)。改正前は、施行令第109条の3が使える車を乗用自動車などに限定していて、小型貨物自動車を使えるのは町村議会議員選挙と町村長選挙だけでした。2026年1月1日の施行でこの条文は削除され、規格が全選挙共通になっています。使える台数は候補者1人につき1台のままです。なお、公費で支払われるのは車両の借入れ・燃料・運転手の報酬の3つで、看板やスピーカーの取付費用は車種にかかわらず自己負担です。車の手配をいつ動き出すべきかは選挙準備スケジュールの記事にまとめています。
結局、選挙全体でいくら必要になりますか?
公費負担を使い切れば、残るのは供託金と、事務所費・人件費などの対象外の費用です。市議会議員選挙なら供託金30万円、町村議会議員選挙なら15万円が起点になります。選挙種別ごとの総額の目安は選挙費用の相場の記事で、市議会議員選挙の内訳は市議会議員選挙の費用の記事で詳しく解説しています。
まとめ
選挙公営制度は、資金がない人でも選挙に挑めるようにするための仕組みです。地方選挙では選挙カー・ポスター・ビラの3項目が中心になり、条件を満たせば自治体が業者へ直接支払います。候補者が立て替える必要もありません。
- まず条例の有無を確認する——地方選挙の主要3項目は、条例がなければ公費の対象になりません
- ポスター掲示場の数を聞く——ポスターの限度額は掲示場の数から計算します
- 供託物没収点を超える——ここに届かないと、公費負担は一切受けられません
- 契約届出を期限内に出す——出し忘れると、上限内の契約でも支払われません
- 対象外の費用を切り分ける——看板・葉書の印刷代・事務所費は自己負担として計算に入れておきます
- 2026年1月からの新しい規格で発注する——ポスターは長さ42cm・幅40cm以内、選挙カーは乗車定員10人以下・車両総重量3.5トン未満です
- 条例の3つの変数を確認する——単価の基準額、ポスターの作成枚数の倍率、固定分316,250円を足す算式かどうか。ここで限度額が数倍変わります
制度を正しく使えば、お金を理由に立候補をあきらめる必要はありません。まず選挙管理委員会に電話を1本。そこから始めてください。
ポスターとビラは持ち出し0円。街宣車の手配まで、まとめてお任せください
0円選挙.COMは、ポスターとビラを公費負担の範囲内で制作します。候補者の持ち出しは0円です。街宣車(選挙カー)の手配も、車両・燃料・運転手の契約から選挙管理委員会への届出まで一括で行います。あなたの自治体の条例を取り寄せて限度額を確定させたうえでご提案します。政治現場10年以上の実務者と、京都大学大学院で研究を続けるメンバーが対応します。相談は無料です。
出典
- 総務省「なるほど!選挙/選挙公営」 https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/naruhodo/naruhodo16.html
- 総務省「なるほど!選挙/立候補を目指す方へ」 https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/naruhodo/naruhodo18.html
- e-Gov法令検索「公職選挙法」第33条・第92条・第93条・第141条・第142条・第143条・第144条・第144条の2・第144条の4・第144条の4の2・第164条・第172条の2・第235条の3 https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC1000000100
- 総務省「公職選挙法の一部を改正する法律要綱(選挙運動に関する規格の簡素化)」令和7年法律第20号・2026年1月1日施行 https://www.soumu.go.jp/main_content/001002901.pdf
- 総務省「公職選挙法の一部を改正する法律要綱(ポスターの品位保持)」令和7年法律第19号・2025年5月2日施行 https://www.soumu.go.jp/main_content/001002897.pdf
- 総務省「公職選挙法の一部改正について(令和7年)」 https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/news/touhyou/shikkokeihi/index_2025.html
- 山口県選挙管理委員会「公職選挙法の一部改正(ポスターの品位保持・選挙運動に関する規格の簡素化)について」 https://www.pref.yamaguchi.lg.jp/site/senkyo/304497.html
- e-Gov法令検索「公職選挙法施行令」第109条の4・第109条の6・第109条の7・第109条の8・第110条の4(令和7年政令第237号による改正後) https://laws.e-gov.go.jp/law/325CO0000000089
- e-Gov法令検索「公職選挙法施行令」令和7年政令第227号による改正前後の条文(2025年6月28日施行。選挙公営の基準額の引上げを条文で対照) https://laws.e-gov.go.jp/law/325CO0000000089/20250628_507CO0000000227
- 総務省「公職選挙法の一部を改正する法律概要(町村議会議員選挙及び町村長選挙における選挙公営の拡大)」 https://www.soumu.go.jp/main_content/000693361.pdf
- 京都府「京都府議会議員及び京都府知事の選挙における選挙運動用自動車の使用等の公営に関する条例」 https://www.pref.kyoto.jp/reiki/reiki_honbun/a300RG00000113.html
- 浦安市「選挙運動費用の公費負担」 https://www.city.urayasu.lg.jp/shisei/senkyo/senkyo/1003176.html
- かすみがうら市「選挙運動費用の公費負担」 https://www.city.kasumigaura.lg.jp/page/page000678.html
- 亘理町「選挙運動費用の公費負担(選挙公営)制度」 https://www.town.watari.miyagi.jp/town/detail.php?content=1277
- 志木市「選挙運動費用の公費負担(選挙公営)制度について」(ポスター掲示場91か所・作成枚数の上限は掲示場数の1.2倍・限度額446,930円) https://www.city.shiki.lg.jp/soshiki/39/2702.html
- 仙台市選挙管理委員会「市長選挙及び市議会議員選挙の選挙運動用ビラの頒布について」(頒布方法に新聞折込みを明記) https://www.city.sendai.jp/senkyokanri-kanri/shise/senkyo/shikumi/sigibira.html
- 群馬県選挙管理委員会「選挙運動用ビラ」(郵送・ポスティングの可否、業者委託ポスティングの扱い) https://www.pref.gunma.jp/07/u01g_00056.html
- 文京区選挙管理委員会事務局「文京区議会議員及び文京区長の選挙における選挙運動の公費負担に関する条例の一部を改正する条例について」(資料第7号・新旧対照表) https://www.city.bunkyo.lg.jp/documents/12385/gi_7.pdf