選挙の基礎知識

公職選挙法をわかりやすく|初めての立候補者が押さえておきたい10のルール

公職選挙法をわかりやすく。選挙運動の期間・戸別訪問・買収・寄附・文書図画・報酬・ネット選挙運動・収支報告の10のルールを、条文と法定刑、選管の公表資料で確認して解説します。

立候補を決めたあと、多くの人がいちばん不安に感じるのは費用ではなく「知らずに法律を破ってしまうこと」です。選挙は、ほかの活動と違って、やってよいことがあらかじめ法律で指定されています。指定されていない方法は、善意でやっても違反になります。

この記事は、公職選挙法をわかりやすく、初めて立候補する人が実際につまずく順に並べ直したものです。条文は2026年10月時点の現行法をe-Gov法令検索の条文全文で確認し、罰則は法定刑の数字まで引いています。読み終えたときに、やってよいことと、やるとどうなるかが地図のように見えている状態をめざしました。

この記事は2026年10月20日時点の公職選挙法(昭和25年法律第100号)および公職選挙法施行令の現行条文にもとづいています。2025年6月1日施行の刑法改正で「懲役」と「禁錮」は「拘禁刑」に一本化されました。本記事の罰則はすべて現行条文の表記に合わせています。選挙運動費用の制限額・報酬の上限額・公費負担の内容は自治体によって異なる場合がありますので、実際の判断は必ずお住まいの選挙管理委員会にご確認ください。

結論:公職選挙法は「期間」「お金」「もの」の3つを縛る法律です

条文は270条を超えますが、立候補者が注意すべき部分は3つに整理できます。いつ動いてよいか(期間)、誰にいくら渡してよいか(お金)、何を配り、何を貼ってよいか(もの)です。この3つから外れた行為に、法律はほぼ例外なく罰則を置いています。

市議会議員選挙で選挙運動ができる日数 7日 告示日から投票日の前日まで。告示日は投票日の少なくとも7日前(法第33条第5項第4号)。町村は5日です
候補者が買収罪を犯した場合の法定刑 4年以下 拘禁刑または100万円以下の罰金(法第221条第3項第1号)。一般の人は3年以下・50万円以下です
選挙犯罪で罰金刑を受けた場合の失権期間 5年間 裁判確定の日から選挙権と被選挙権を失います(法第252条第1項)。拘禁刑ならさらに長くなります

先に押さえたい、この法律の3つの考え方

  • 「書いていないことはできない」のが原則です。配れるビラの枚数も、貼れるポスターの場所も、法律と政令が指定しています。指定外の方法は、たとえ安く済んでも違反になります
  • 知らなかったことは、ほとんど言い訳になりません。公職選挙法の罰則は、違反行為そのものを処罰する作りになっています
  • 本人が知らなくても当選が消えることがあります。選挙運動を手伝った人が買収罪で拘禁刑になると、候補者の当選が無効になる連座制があります(法第251条の2・第251条の3)

以下が、初めて立候補する人がつまずきやすい順に並べた10のルールです。該当する条文と、違反したときの法定刑を同じ表に入れました。

ルール根拠条文違反したときの法定刑
1|選挙運動は告示日から投票日前日まで法第129条1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金(法第239条第1項第1号)
2|戸別訪問・署名運動はできない法第138条・第138条の21年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金(法第239条第1項第3号・第4号)
3|金銭・物品・接待を渡さない法第221条3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金。候補者・総括主宰者・出納責任者は4年以下・100万円以下
4|選挙区内の人へ寄附をしない法第199条の2選挙に関するものは1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金。それ以外は50万円以下の罰金(法第249条の2)
5|年賀状・暑中見舞いを出さない法第147条の2罰則なし ただし有料のあいさつ広告は50万円以下の罰金(法第152条・第235条の6)
6|文書図画は法定のものだけ法第142条・第143条・第146条2年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金(法第243条第1項第3号〜第5号)
7|飲食物は湯茶と菓子まで法第139条2年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金(法第243条第1項第1号)
8|報酬は届け出た相手に、上限内で法第197条の2対価性が認められれば法第221条の買収罪が問われます
9|ネット選挙運動に有料広告は使えない法第142条の62年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金(法第243条第1項第3号の3)
10|選挙後15日以内に収支報告書を出す法第189条第1項第1号3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金(法第246条第1項第5号の2)

この10項目は、費用の話とも直結しています。たとえばルール6を守るだけで、ポスターとビラは公費負担の対象になります。選挙全体でいくらかかるのかは選挙の費用相場の記事で、公費負担の全体像は選挙公営制度の記事で整理しています。

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ルール1|選挙運動ができるのは、告示日から投票日の前日までです

法第129条は、選挙運動ができる期間を「候補者の届出のあつた日から当該選挙の期日の前日まで」と定めています。届出前の選挙運動は事前運動として禁止され、1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金です(法第239条第1項第1号)。

この期間は、思っているよりずっと短いです。地方選挙の告示日は法第33条第5項が選挙の種類ごとに定めています。

選挙の種類告示の期限選挙運動ができる日数
都道府県知事少なくとも17日前17日
指定都市の長少なくとも14日前14日
都道府県議会議員・指定都市議会議員少なくとも9日前9日
指定都市以外の市の議会議員・市長少なくとも7日前7日
町村の議会議員・町村長少なくとも5日前5日
選挙の種類別の選挙運動ができる日数 選挙運動ができる日数(告示日から投票日の前日まで) 公職選挙法第33条第5項。告示日はここに示した日数より前に設定されることもあります 町村の議会議員・町村長 5日 市の議会議員・市長 7日 都道府県議会・指定都市議会 9日 指定都市の長 14日 都道府県知事 17日 新人が挑みやすい区分。運動期間はいちばん短いです
図1:選挙運動ができる日数。町村議会議員選挙はわずか5日しかありません

では、告示日より前は何もできないのか

できることはあります。禁止されているのは「選挙運動」、つまり特定の選挙で特定の人に投票を得させるための行為です。これに当たらない立候補の準備行為と政治活動は、期間の制限を受けません。

告示日の前にできること

準備と政治活動

選挙事務所の物件探し、ポスター・ビラのデザイン制作、業者との契約、後援会の活動、政策の勉強と発表、政党への公認申請

法第197条第1項第1号は、立候補準備のために要した支出を「選挙運動に関する支出でないものとみなす」と定めています。ただし候補者本人または出納責任者となった者がした支出は除かれます

対

告示日を待たないといけないこと

投票の依頼

「○月○日の選挙で私に投票してください」と伝える行為、選挙運動用のビラ・ポスターの頒布と掲示、街宣車での連呼、街頭演説

1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金に加え、法第252条で選挙権と被選挙権を5年間失う可能性があります

線引きがいちばん難しい場所です

準備行為と事前運動の境目は、条文に数値で書かれていません。実務では、相手に伝わる内容と、その時期、回数、規模から総合的に判断されます。「後援会への入会をお願いする」のは政治活動ですが、特定の選挙を挙げて投票を依頼すれば選挙運動です。迷った行為は、やる前に選挙管理委員会に確認してください。終わってからの相談では間に合いません。

この短い期間にすべてを詰め込むために、準備は告示日よりはるかに前から始まります。何をいつまでにやるべきかは選挙準備の逆算スケジュールの記事に、2027年の統一地方選に照準を合わせた日程は統一地方選2027の準備記事にまとめています。

ルール2|戸別訪問は、誰であってもできません

法第138条第1項は「何人も、選挙に関し、投票を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもつて戸別訪問をすることができない」と定めています。候補者本人だけでなく、家族でも、支援者でも、誰であってもできません。

さらに第2項で、次の2つは「戸別訪問に該当するものとみなす」とされています。

  • 戸別に、演説会の開催や演説を行うことを告知する行為——「今夜、公民館で演説会をやります」と一軒ずつ回るのも戸別訪問です
  • 戸別に、特定の候補者の氏名や政党の名称を言いあるく行為——「○○をお願いします」と家々を歩くことです

違反は1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金です(法第239条第1項第3号)。選挙運動の方法として地盤のない新人がもっとも頼りたくなるのが戸別訪問ですが、ここは完全に閉じています。地盤・看板・カバンなしの戦い方の記事では、戸別訪問が使えない前提で何を代わりに積むかを整理しました。

あわせて禁止されている2つの行為

行為条文内容法定刑
署名運動法第138条の2投票を得る目的で選挙人に署名を集めること1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金(法第239条第1項第4号)
人気投票の公表法第138条の3公職に就くべき者を予想する人気投票の経過・結果を公表すること2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金(法第242条の2)

ルール3|お金と物は、渡すほうも受け取るほうも罪になります

買収罪(法第221条)は、公職選挙法のなかでいちばん重い罰則が置かれた条文です。「当選を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもつて選挙人又は選挙運動者に対し金銭、物品その他の財産上の利益若しくは公私の職務の供与、その供与の申込み若しくは約束をし又は供応接待、その申込み若しくは約束をしたとき」が、第1項第1号に当たります。

見落としやすいのは、申込みと約束だけで成立するという点です。実際に渡していなくても、「当選したらポストを用意する」と言えば第1号に当たります。また第4号で、供与を受けた側・要求した側・申込みを承諾した側も処罰されます。

誰が犯したか法定刑根拠
一般の人(支援者・運動員・選挙人)3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金法第221条第1項
選挙管理委員会の委員・職員、選挙事務に関係する公務員、警察官など4年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金法第221条第2項
公職の候補者/選挙運動を総括主宰した者/出納責任者/地域主宰者4年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金法第221条第3項
買収罪の法定刑と連座制の射程 買収罪で拘禁刑になると、候補者の当選まで消えます 公職選挙法第221条・第251条の2・第251条の3 運動員・支援者が買収罪を犯した 3年以下の拘禁刑 または50万円以下の罰金 → 候補者側に起きること 当選が無効になる 同じ選挙区で5年間立候補できない 連座の対象になる人(法第251条の2第1項・第251条の3) 総括主宰者/出納責任者/地域主宰者/父母・配偶者・子・兄弟姉妹/秘書/組織的選挙運動管理者等 組織的選挙運動管理者等とは、候補者と意思を通じて選挙運動の計画の立案・調整や運動員の指揮・監督を行う人です 候補者が違反を防ぐため相当の注意を怠らなかったときは、連座は適用されません(法第251条の3第2項第3号)
図2:買収罪と連座制の関係。他人の行為で当選が消えるのが、この制度のこわさです

連座制は、候補者が知らなくても働きます

法第251条の2第1項は、総括主宰者・出納責任者・地域主宰者が買収罪などで刑に処せられたとき、候補者であった者の当選を無効とし、5年間その選挙区で立候補できないと定めています。父母・配偶者・子・兄弟姉妹、そして秘書は、候補者らと意思を通じて選挙運動をした場合に、拘禁刑に処せられたときが対象です(同項第4号・第5号)。

さらに法第251条の3は組織的選挙運動管理者等を対象に加えました。候補者と意思を通じて組織により行われる選挙運動で、計画の立案・調整や運動員の指揮・監督、その他の管理を行う人です。選挙事務所の責任者や、地区ごとの取りまとめ役が入ります。

ただし同条第2項第3号は、候補者が「相当の注意を怠らなかつたとき」は適用しないと定めています。運動員に対して文書で禁止事項を伝え、研修を行い、記録を残すことが、この「相当の注意」の実質です。選挙コンサル・選挙プランナーの費用相場の記事では、外部に運動の管理を委ねるときにこの条文がどう効いてくるかを扱っています。

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ルール4|選挙区内の人への寄附は、名義を問わず禁止です

法第199条の2第1項は、公職の候補者等が「当該選挙区内にある者に対し、いかなる名義をもつてするを問わず、寄附をしてはならない」と定めています。ここでいう公職の候補者等には、立候補しようとしている人と、現職の議員が含まれます。立候補を決めた日から、この制限が始まると考えてください。

禁止されるのは、お金だけではありません。地域の行事への差し入れ、神社や寺への奉納、スポーツ大会への賞品提供、結婚祝い、お見舞い、お中元も寄附です。青森県選挙管理委員会は、政治家以外の者が政治家名義で寄附を行うこと、政治家に寄附を勧誘・要求することも禁止されていると案内しています。

行為可否根拠・注意点
地域の祭り・運動会への寄附、差し入れできない法第199条の2第1項。名義を問いません
政党・政治団体またはその支部への寄附できる同項ただし書の除外
親族への寄附できる同項ただし書の除外
本人が結婚披露宴に自ら出席して渡す祝儀罰則の対象外法第249条の2第3項第1号。選挙に関するものや通常一般の社交の程度を超えるものは処罰されます
本人が葬式に自ら出席して渡す香典罰則の対象外法第249条の2第3項第2号。葬式の日までに自ら弔問してその場で渡す場合も同じです。供花・花輪は含まれません
秘書や家族が代わりに持参する香典できない「自ら出席し」「自ら弔問し」がこの除外の条件です
後援団体が出す花輪・供花・香典・祝儀できない法第199条の5第1項。違反は50万円以下の罰金(法第249条の5第1項)
祝儀と香典は「許された」のではありません

結婚披露宴の祝儀と葬式の香典は、法第199条の2第1項の禁止そのものからは外れていません。法第249条の2第3項が、罰則を適用する寄附の範囲からこの2つを除いている、という構造です。したがって、選挙に関して渡した場合や、通常一般の社交の程度を超える金額を渡した場合は処罰されます。同条第2項は「通常一般の社交の程度を超えて」した寄附を、当該選挙に関して違反したものとみなすと定めています。

任期満了による選挙では、さらに期間限定の上乗せ規制がかかります。法第199条の5第4項第3号により、任期満了の日前90日に当たる日から選挙期日までの間は、後援団体が行う行事に関する寄附も、後援団体の集会での金品の供与もできなくなります。2027年の統一地方選でこの90日がいつ始まるかは、統一地方選2027の準備記事で日付まで追いました。

ルール5|年賀状と暑中見舞いは出せません

法第147条の2は、公職の候補者等が選挙区内にある者に対し、答礼のための自筆によるものを除き、年賀状・寒中見舞状・暑中見舞状その他これらに類するあいさつ状を出してはならないと定めています。電報も含まれます。

この条文には、注意すべき特徴が2つあります。

  • 罰則が置かれていません——公職選挙法の罰則章(第16章)に、法第147条の2違反を処罰する規定はありません。だからといって出してよいわけではなく、禁止規定であることは変わりません
  • 自筆の答礼だけが例外です——相手から年賀状をもらったことへの返礼を、印刷ではなく自分の手で書く場合に限られます。印刷した年賀状に一言だけ手書きで添えるのは、ここでいう自筆には当たりません

一方、あいさつを目的とする有料広告には罰則があります。法第152条第1項は、候補者等と後援団体が、年賀・寒中見舞・暑中見舞のためのあいさつや、慶弔・激励・感謝のためのあいさつを主な目的とする広告を、有料で新聞・雑誌・ビラ・パンフレット・インターネット等に掲載させることを禁じています。違反は50万円以下の罰金です(法第235条の6第1項)。地域の広報紙や記念誌の名刺広告は、ここに該当する可能性があります。

ルール6|配れる文書・貼れる文書は、法律が決めたものだけです

選挙運動のために使う文書図画は、頒布が法第142条、掲示が法第143条で規定されています。どちらも「指定されたものだけ」という作りで、指定外のものを配れば法第243条第1項第3号、貼れば同項第4号で2年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。

種類条文指定都市以外の市議会議員選挙の例
通常葉書法第142条第1項第6号2,000枚
選挙運動用ビラ法第142条第1項第6号4,000枚(2種類以内)
選挙運動用ポスター法第143条第1項第5号ポスター掲示場の数に応じた枚数
選挙事務所の立札・看板の類法第143条第1項第1号選挙事務所ごとに通じて3つまで(同条第7項)
街宣車に取り付ける立札・看板の類法第143条第1項第3号自動車・船舶ごと

そして法第146条が、この制限を迂回する行為を封じています。候補者の氏名や氏名が類推されるような事項を記載したあいさつ状・名刺・年賀状・その他の文書図画を頒布・掲示することは、法第142条・第143条の禁止を免れる行為とみなされます。違反は同じく2年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です(法第243条第1項第5号)。「選挙運動のためではない」という説明は通りません。

裏を返せば、指定された枚数と規格を守れば、ポスターとビラは公費負担の対象になります。ポスターの上限額と計算式は選挙ポスターの公費負担の記事、ビラの法定枚数と証紙の段取りは選挙ビラの印刷と配布の記事、街宣車の上限額は選挙カーの公費負担の記事にそれぞれまとめています。

ルール7|飲食物は湯茶と菓子まで。弁当だけが例外です

法第139条は「何人も、選挙運動に関し、いかなる名義をもつてするを問わず、飲食物(湯茶及びこれに伴い通常用いられる程度の菓子を除く。)を提供することができない」と定めています。手伝いに来てくれた人へのお茶と、お茶に添える程度のお菓子だけが、最初から外れています。

そのうえで、同条ただし書が弁当だけを例外として認めています。条件は3つです。

選挙事務所で提供できる弁当の上限(市議会議員選挙・事務所1か所の場合)

1日あたり45食分 × 選挙運動の日数7日 = 期間中の上限315食分

法第139条ただし書は「十五人分(四十五食分)」に、告示の日から選挙の期日の前日までの日数を乗じた数分を上限としています。選挙事務所が1か所を超える場合は、1か所増すごとに6人分(18食分)が加算されます。

金額の上限は、施行令第129条第1項第1号ヘの弁当料「1食につき1,500円、1日につき4,500円」の範囲内です。条文どおりに計算すると、315食×1,500円=472,500円が上限の目安になります。弁当料の具体的な額は選挙管理委員会が定めるため、自治体によって異なる場合があります。

この弁当は、選挙運動に従事する者と労務者に対して、選挙事務所において食事するために提供するものです。携行するために提供された弁当も含まれますが、街頭で支援者に配る食べ物は該当しません。違反は2年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です(法第243条第1項第1号)。

差し入れの受け取りも整理しておきます

支援者が善意で持ってきてくれた弁当や飲み物を、そのまま運動員に配ると法第139条の問題になります。選挙事務所の運用ルールとして、受け取れるもの・受け取れないものを初日に決めておくのが現実的です。事務所の運営費用そのものは選挙事務所の費用相場の記事で項目別に扱っています。

ルール8|報酬を払える相手は、届け出た人に限られます

選挙運動は原則として無償です。ボランティアで手伝ってもらうのが前提で、報酬を払えるのは法第197条の2が列挙した職種に限られます。

区分1人1日あたりの上限根拠
選挙運動のために使用する事務員15,000円以内施行令第129条第4項
車上運動員(いわゆるうぐいす嬢)20,000円以内施行令第129条第4項
手話通訳者20,000円以内施行令第129条第4項
要約筆記者20,000円以内施行令第129条第4項
労務者(基本日額)10,000円以内施行令第129条第1項第2号イ
労務者(超過勤務手当)基本日額の5割以内施行令第129条第1項第2号ロ

人数にも上限があります。施行令第129条第3項により、1日に報酬を支給できる人数は、指定都市以外の市議会議員選挙で9人、町村議会議員選挙で7人、都道府県議会・指定都市議会議員選挙で12人です。同条第8項により、期間を通じて異なる人を届け出る場合は、この員数の5倍までが上限になります。熊谷市選挙管理委員会は、市議会議員選挙について「9人(異なる者の延員数45人)」と案内しています。

  1. 報酬を支給する人を、使う前に選挙管理委員会へ届け出る——法第197条の2第5項は「その者を使用する前に」届け出た者に限ると定めています。熊谷市は「届け出ない者に報酬は支給できません」と明記しています
  2. 上限額と人数の枠内で雇う——事務員なら1人1日15,000円以内、市議会議員選挙なら1日9人までです
  3. 弁当を提供した日は、報酬から弁当の実費を差し引く——施行令第129条第2項の定めです。弁当と報酬の二重取りはできません
  4. 領収書を徴して出納責任者に送る——法第188条の義務です。徴し難い事情があるときを除き、すべての支出に必要です
報酬を払えない人がいます

熊谷市選挙管理委員会は、「選挙運動のために使用する事務員」とは選挙運動に関する事務に従事する者として雇い入れた者をいい、総括主宰者・出納責任者・親族等の特別信頼関係から選挙運動に従事する者は含まれないため報酬を支給できないと案内しています。枠内に収まる人数であっても、相手によっては払えません。上限や届出を外れた支払いは、対価性が認められれば法第221条第1項第3号の報酬目的の供与として買収罪が問われます。

ルール9|ネットは使えますが、有料広告は出せません

法第142条の3第1項により、選挙運動のために使う文書図画は、ウェブサイト等を利用する方法で頒布できます。ホームページ、ブログ、SNS、動画投稿サイトが入ります。第3項は、頒布する者の電子メールアドレス等が受信者の画面に正しく表示されるようにしなければならないと定めています。

一方、閉じている部分が3つあります。

やろうとしがちなこと可否条文
ホームページ・SNS・動画で投票を呼びかけるできる法第142条の3第1項
投票日の前日までに投稿したものを、投票日もそのまま置いておくできる法第142条の3第2項
候補者名を表示した有料のネット広告を出すできない法第142条の6第1項。2年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金(法第243条第1項第3号の3)
候補者名を出さず、選挙運動用サイトへ飛ばすバナー広告を出すできない法第142条の6第3項。選挙運動の期間中は禁止です
ウェブサイトの内容を印刷して配るできない紙にした時点で法第142条の文書図画の頒布になります
市議会議員選挙で、候補者が電子メールで選挙運動をする2027年2月28日まで可法第142条の4第1項第7号。送信先は同条第2項の要件を満たす相手に限られます

2027年3月1日に、ネット選挙運動のルールが変わります

令和8年法律第58号(2026年7月17日公布)が2027年3月1日に施行されます。e-Gov法令検索の施行日版の条文全文で確認した変更点は、次の3つです。

  • 電子メールの送信規制が条文ごと消えます——現行の法第142条の4(電子メールを利用する方法による文書図画の頒布)が削除され、法第142条の3が「インターネット等を利用する方法」に一本化されます。送信者を候補者と政党に限る規制と、受信者の同意要件がなくなります
  • AI生成画像の表示義務が新設されます——新しい法第142条の5により、人工知能関連技術を利用して作成・改変された画像や映像を載せた選挙運動用の文書図画をネットで頒布する者は、AIで作成・改変したものである旨を受信者の画面に正しく表示しなければなりません。改変の内容が社会通念に照らして軽微なもの、実際に撮影されたものと誤認されるおそれのないものは除かれます
  • 条番号が入れ替わります——現行の法第142条の5(当選を得させないための活動の表示義務)が法第142条の4に繰り上がります。改正前の条番号で書かれた資料を読むときは、施行日の前後で意味が変わる点に注意してください

2027年の統一地方選は、この改正後のルールで行われます。ネット選挙運動の詳しい論点は無所属・新人が選挙で勝つにはの記事で、改正条文ごとに整理しました。

ルール10|投票日の後にも、締切と制限が残ります

投票日を過ぎたら終わり、ではありません。やってはいけないことと、やらなければいけないことが、それぞれ残ります。

当選御礼は、できる形が限られています

法第178条は、選挙の期日後に当選または落選に関して選挙人にあいさつする目的で行える行為を制限しています。禁止されるのは次の7つです。

禁止される行為条文
選挙人に対して戸別訪問をすること法第178条第1号
文書図画を頒布・掲示すること(自筆の信書、答礼のためにする信書、インターネット等で頒布される文書図画を除く)法第178条第2号
新聞紙または雑誌を利用すること法第178条第3号
放送設備を利用して放送すること法第178条第4号
当選祝賀会その他の集会を開催すること法第178条第5号
自動車を連ねたり隊を組んで往来するなどして気勢を張ること法第178条第6号
当選に関する答礼のため当選人の氏名や政党名を言い歩くこと法第178条第7号

違反は30万円以下の罰金です(法第245条)。重要なのは第2号で、インターネット等を利用する方法により頒布される文書図画は除かれているという点です。SNSやホームページでのお礼は、紙のお礼状と違ってできます。また、ポスターと立札・看板の類は、選挙期日後すみやかに撤去する義務があります(法第178条の2)。

収支報告書の締切は、投票日から15日です

法第189条第1項第1号により、出納責任者は、選挙運動に関する収入と支出の報告書を選挙の期日から15日以内に選挙管理委員会へ提出しなければなりません。領収書その他の支出を証すべき書面の写しを添付します。精算届出の後に発生した収入・支出は、その日から7日以内に追加で提出します(同項第2号)。

提出しない、または虚偽の記入をした場合は、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です(法第246条第1項第5号の2)。会計帳簿を備えない、記載しない、虚偽の記入をした場合も同じ法定刑です(同項第2号)。

使える金額にも上限があります

法第194条と施行令第127条が、選挙運動に関する支出の法定制限額を定めています。指定都市以外の市議会議員選挙の計算式は、次のとおりです。

指定都市以外の市議会議員選挙の法定制限額(延岡市が公表している計算例)

名簿登録者数÷定数108,100÷29 × 人数割額501円 + 固定額2,200,000円 = 法定制限額4,067,600円

人数割額と固定額は施行令第127条第1項の表の額です。法第194条第2項により、100円未満の端数は100円とします。名簿登録者数は告示日の選挙人名簿登録者数で、定数は選挙区内の議員定数です。延岡市は名簿登録者数108,100人・定数29での計算例を公表しています。

人数割額の合計が固定額の2倍(4,400,000円)を超えるときは、制限額は固定額の3倍の6,600,000円になります(施行令第127条第2項)。熊谷市選挙管理委員会も同じ扱いを案内しています。制限額は立候補届出の際に選挙管理委員会から知らされます。

この制限額を超えて支出すると、出納責任者は3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です(法第247条)。さらに法第251条の2第3項により、候補者であった者の当選は無効となり、5年間その選挙区で立候補できなくなります。

ただし、法第197条第1項により、次の支出は選挙運動に関する支出とみなされません。供託金、立候補準備のために要した支出(候補者本人または出納責任者となった者がした支出とその者と意思を通じてした支出を除く)、候補者が乗用する船車馬等のための支出、選挙期日後の残務整理のための支出、国や地方公共団体の租税・手数料です。同条第2項により、法第141条による自動車と船舶の使用に要した支出も同じ扱いです。

公費負担を使えば、ポスター・ビラ・街宣車の費用は制限額の枠をほとんど消費しません。これが、持ち出しを抑えながら法定制限額の中に収める実務的な道筋になります。市議会議員選挙の費目別の内訳は市議会議員選挙の費用の記事、町村の場合は町議会議員選挙の費用の記事で扱っています。

指定都市以外の市議会議員選挙の法定制限額の構造 法定制限額は「人数割額」と「固定額」の足し算です 公職選挙法第194条・同施行令第127条。延岡市の計算例(名簿登録者数108,100人・定数29) 人数割額の合計 1,867,520円(3,727.58…×501円) 固定額 2,200,000円 法定制限額 4,067,600円(100円未満の端数は100円) 人数割額の合計が固定額の2倍(4,400,000円)を超えるときは、制限額は固定額の3倍の6,600,000円になります 額は自治体の名簿登録者数と議員定数で変わります。立候補届出の際に選挙管理委員会から知らされます
図3:法定制限額の構造。固定額が大きいため、小規模な自治体ほど1票あたりの枠は広くなります

公務員・教員・18歳未満の人には、別の線が引かれています

選挙運動ができる人・できない人も、法律が指定しています。手伝ってくれる人に声をかける前に、確認しておきたい部分です。

対象制限の内容条文
選挙管理委員会の委員・職員、裁判官、検察官、会計検査官、公安委員会の委員、警察官、収税官吏・徴税の吏員在職中は選挙運動そのものができません法第136条
国・地方公共団体の公務員、行政執行法人・特定地方独立行政法人の役職員、沖縄振興開発金融公庫の役職員その地位を利用して選挙運動をすることができません。候補者の推薦への関与、選挙運動の企画への関与、後援団体の結成、文書図画の発行・掲示・頒布も、地位を利用して行えばこれに当たります法第136条の2。違反は2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金(法第239条の2第2項)
教育者(学校教育法に規定する学校および幼保連携型認定こども園の長・教員)児童・生徒・学生に対する教育上の地位を利用して選挙運動をすることができません法第137条。違反は1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金(法第239条第1項第1号)
18歳未満の人選挙運動ができません。18歳未満の人を使用して選挙運動をさせることもできません(選挙運動のための労務に使用する場合を除く)法第137条の2。違反は1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金(法第239条第1項第1号)
選挙犯罪などで選挙権・被選挙権を有しない人選挙運動ができません法第137条の3
選挙事務関係者(投票管理者・開票管理者など)在職中、その関係区域内で選挙運動ができません法第135条

公務員が自ら立候補する場合は、別の仕組みがあります。法第89条第1項と第90条により、公務員は立候補の届出をした日に、その職を辞したものとみなされます。辞表を先に出す必要はありません。この点は市議会議員になるにはの記事と選挙準備の逆算スケジュールの記事で条文に沿って整理しました。

違反すると何が起きるか:失権と連座制

公職選挙法違反の影響は、罰金や拘禁刑だけではありません。選挙権と被選挙権そのものを失います。

受けた刑選挙権・被選挙権を失う期間条文
罰金刑裁判が確定した日から5年間(執行猶予の言渡しを受けた者は、裁判確定の日から刑の執行を受けることがなくなるまでの間)法第252条第1項
拘禁刑裁判確定の日から刑の執行を終わるまでの間、およびその後5年間(執行猶予の場合は刑の執行を受けることがなくなるまでの間)法第252条第2項
買収罪などで刑に処せられた者が、さらに買収罪などで刑に処せられた場合上記の5年間が10年間になります法第252条第3項

裁判所は情状により、この期間を適用しない、または短縮する旨を宣告することができます(法第252条第4項)。ただし買収罪などで刑に処せられた者については、適用しない旨の宣告はできず、短縮の宣告のみです。

そして前に見たとおり、連座制があります。候補者本人が無関係であっても、総括主宰者・出納責任者・地域主宰者・親族・秘書・組織的選挙運動管理者等が買収罪などで刑に処せられれば、当選は無効となり、同じ選挙区で5年間立候補できません。

体制側でできる「相当の注意」の中身

  • 運動員全員に禁止事項を文書で渡す——戸別訪問、金品の授受、飲食物の提供、期間外の運動。この4点は口頭ではなく紙で伝えます
  • 読み合わせの記録を残す——日付・参加者・内容を残しておくことが、法第251条の3第2項第3号の「相当の注意を怠らなかつた」の立証材料になります
  • 支出はすべて出納責任者に通す——法第187条第1項は、立候補準備のための支出と、電話・インターネット等を利用する方法による選挙運動に要する支出を除き、選挙運動に関する支出は出納責任者でなければできないと定めています。ただし出納責任者の文書による承諾を得た者は例外です
  • 領収書を1枚残らず集める——法第188条第1項の義務です。徴し難い事情があるときを除きます

迷ったら、選挙管理委員会に聞くのがいちばん早いです

公職選挙法には、条文を読んでも答えが出ない場面がたくさんあります。この行為は政治活動か選挙運動か。この支出は計上すべきか。この看板は法第143条のどの号に当たるか。こうした判断は、最終的には選挙管理委員会が運用しています。

  1. 立候補予定者説明会に必ず出る——告示日の数か月前に開かれます。届出書類の様式、公費負担の単価、報酬の上限額、法定制限額の計算方法が、その自治体の条例に即して配られます
  2. 手引きを全部読む——多くの選挙管理委員会が、立候補届出の手引きと選挙運動費用の手引きを配布しています。禁止事項は、だいたいここに書かれています
  3. 迷う行為は、やる前に電話で聞く——担当者名と日付をメモしておきます。やってしまってからでは選択肢がありません
  4. 条例の内容を確認する——公費負担の有無と単価は条例で定めます。条例がなければ公費負担は受けられません(法第141条第8項・第142条第11項・第143条第15項)

立候補の届出に必要な書類と期限は選挙に立候補するにはの記事、供託金の額と没収ラインは選挙の供託金の記事、資金の目処が立たないときの考え方は選挙資金がない人でも立候補できる?の記事にまとめています。

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よくある質問

後援会の活動は、告示日より前でもできますか?

政治活動としての後援会活動は、選挙運動ではないため期間の制限を受けません。ただし、特定の選挙を挙げて投票を依頼すれば選挙運動になり、法第129条違反です。また、任期満了による選挙では、法第199条の5第4項第3号により任期満了の日前90日に当たる日から選挙期日までの間、後援団体が行う行事に関する寄附と、後援団体の集会での金品の供与ができなくなります。

支援者が自分のSNSで応援してくれるのは問題ありませんか?

選挙運動の期間中であれば、有権者がウェブサイトやSNSで選挙運動をすることはできます(法第142条の3第1項)。頒布する人の電子メールアドレス等が画面に正しく表示されるようにする必要があります(同条第3項)。ただし投稿内容を印刷して配ると、法第142条の文書図画の頒布になるため禁止です。また、有料のネット広告は法第142条の6で禁じられています。

名刺を配るのは選挙運動になりますか?

通常の社会生活のなかで名刺を交換することは、一般に選挙運動には当たらないと扱われています。一方、法第146条は、候補者の氏名や氏名が類推されるような事項を記載した名刺・あいさつ状・その他の文書図画を頒布・掲示する行為を、法第142条・第143条の禁止を免れる行為とみなすと定めています。配る時期・相手・枚数・記載内容によって評価が変わるため、選挙が近づいたら選挙管理委員会に具体的な使い方を確認してください。

地域の祭りに寄附を頼まれました。少額なら大丈夫ですか?

金額の大小にかかわらず、法第199条の2第1項に違反します。同項は「いかなる名義をもつてするを問わず」と定めており、金額の下限は置かれていません。罰則の対象から除かれているのは、本人が結婚披露宴に自ら出席してその場で渡す祝儀と、本人が葬式に自ら出席してその場で渡す香典(および葬式の日までに自ら弔問してその場で渡す香典)の2つだけです(法第249条の2第3項第1号・第2号)。断る理由として法律の名前を出して構いません。

運動員にお礼としてお金を渡すのは買収になりますか?

選挙運動をしたことの報酬とする目的で金銭を渡せば、法第221条第1項第3号に当たります。報酬を支給できるのは、法第197条の2が列挙した事務員・車上運動員・手話通訳者・要約筆記者と、労務者に限られ、いずれも使用する前に選挙管理委員会へ届け出た者だけです(同条第5項)。熊谷市選挙管理委員会は、総括主宰者・出納責任者・親族等の特別信頼関係から選挙運動に従事する者には報酬を支給できないと案内しています。

選挙事務所でお茶とお菓子を出すのは問題ありませんか?

湯茶と、それに伴い通常用いられる程度の菓子は、法第139条の禁止から最初から除かれています。弁当は、同条ただし書の範囲内であれば提供できます。市議会議員選挙で選挙事務所が1か所なら、1日45食分×7日=315食分が上限で、金額は施行令第129条第1項第1号ヘの弁当料(1食1,500円・1日4,500円)の範囲内です。弁当料の具体的な額は選挙管理委員会が定めるため、自治体によって異なる場合があります。

当選したら、お礼のはがきを出してもいいですか?

印刷したお礼状は出せません。法第178条第2号は、当選または落選に関して選挙人にあいさつする目的での文書図画の頒布・掲示を禁じており、除かれているのは自筆の信書、祝辞や見舞いへの答礼のためにする信書、そしてインターネット等を利用する方法により頒布される文書図画です。したがって、自分の手で書いた手紙とSNSでのお礼はできます。違反は30万円以下の罰金です(法第245条)。

当選祝賀会を開くことはできますか?

当選または落選に関して選挙人にあいさつする目的で開く集会は、法第178条第5号で禁止されています。違反は30万円以下の罰金です(法第245条)。選挙運動を手伝った人だけで事務所を片付けながらねぎらう行為と、選挙人へのあいさつを目的とする祝賀会は別物ですが、線引きは実態で判断されます。規模と招く相手を決める前に選挙管理委員会に確認してください。

収支報告書を出し忘れたらどうなりますか?

法第189条第1項の報告書を提出しない、または虚偽の記入をした場合、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です(法第246条第1項第5号の2)。提出期限は選挙の期日から15日以内で、領収書その他の支出を証すべき書面の写しを添付します。会計帳簿を備えない、記載しない、虚偽の記入をした場合も同じ法定刑です(同項第2号)。落選した場合も提出義務はあります。

法定制限額を超えたら、当選は取り消されますか?

法第196条で告示された額を超えて支出をし、または支出をさせた出納責任者は、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です(法第247条)。そして法第251条の2第3項により、出納責任者がこの罪で刑に処せられたときは、候補者であった者の当選は無効となり、その者は5年間その選挙区の当該公職の選挙で立候補できません。制限額は立候補届出の際に選挙管理委員会から知らされます。

知らずにやってしまった場合も処罰されますか?

公職選挙法の罰則は、違反行為そのものを処罰する作りになっています。「知らなかった」という説明は、原則として責任を免れる理由になりません。だからこそ、迷う行為は着手する前に選挙管理委員会に確認し、運動員にも禁止事項を文書で伝えておくことが実務上の防御になります。連座制については、候補者が相当の注意を怠らなかったことが認められれば適用されません(法第251条の3第2項第3号)。

公費負担を使えば、本当に持ち出しは減りますか?

条例がある自治体で、単価と枚数が上限の範囲に収まる発注をすれば、ポスター・ビラ・街宣車の費用は公費で支払われます。公費負担の上限額は条例で定めるため、自治体によって異なります。また、地方選挙の公費負担は法第141条第8項・第142条第11項・第143条第15項が、それぞれ国政選挙の規定に準じて条例で定めるという形を取っており、その国政選挙の規定(法第141条第7項ただし書など)が供託物が没収されない程度の得票を条件としています。つまり没収点以上の得票が必要です。詳しくは選挙公営制度の記事をご覧ください。

まとめ:条文を10個覚えれば、ほとんどの場面に答えが出ます

公職選挙法は分厚い法律ですが、立候補者がつまずく場所は限られています。期間(法第129条)、戸別訪問(法第138条)、買収(法第221条)、寄附(法第199条の2)、文書図画(法第142条・第143条・第146条)、飲食物(法第139条)、報酬(法第197条の2)、ネット(法第142条の3・第142条の6)、選挙後のあいさつ(法第178条)、収支報告(法第189条)。この10個の条番号を手元に置いておけば、判断に迷ったときの調べ先がすぐ分かります。

  • 告示日の前に投票を依頼しない——準備行為と政治活動は制限を受けません。線引きに迷ったら着手前に選挙管理委員会へ
  • 戸別訪問は家族にも支援者にもさせない——演説会の告知で一軒ずつ回るのも戸別訪問です
  • 金品のやりとりは、申込みと約束の段階で成立する——「当選したら」という将来の約束も買収です
  • 選挙区内の人への寄附は金額を問わず断る——法律の名前を出して断って構いません
  • 年賀状・暑中見舞いは出さない——罰則はありませんが禁止規定です。有料のあいさつ広告には罰金があります
  • 配る紙・貼る紙は、必ず条文の号を確認する——規格と枚数を守れば公費負担の対象になります
  • 飲食物は湯茶と菓子まで。差し入れの扱いを初日に決める
  • 報酬を払う相手は、使う前に届け出る——事務員15,000円以内、車上運動員20,000円以内。市議会議員選挙は1日9人までです
  • 有料のネット広告は出さない——2027年3月1日からAI生成画像の表示義務が加わります
  • 投票日から15日以内に収支報告書を出す——落選した場合も義務があります

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出典

  1. e-Gov法令検索「公職選挙法」(昭和25年法律第100号。2026年9月3日施行の現行条文。第33条・第89条・第90条・第129条・第135条〜第139条・第140条の2・第142条・第142条の3〜第142条の7・第143条・第146条・第147条の2・第152条・第164条の6・第178条・第178条の2・第180条・第184条・第185条・第187条〜第189条・第194条・第196条・第197条・第197条の2・第199条の2・第199条の5・第221条・第225条・第235条・第235条の6・第239条・第239条の2・第243条・第245条・第246条・第247条・第249条の2・第249条の5・第251条の2・第251条の3・第252条) https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC1000000100
  2. e-Gov法令検索「公職選挙法施行令」(昭和25年政令第89号。2026年9月24日施行の現行条文。第127条・第129条) https://laws.e-gov.go.jp/law/325CO0000000089
  3. e-Gov法令検索「公職選挙法」2027年3月1日施行版(令和8年法律第58号による改正後。第142条の3〜第142条の7・第243条) https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC1000000100
  4. 総務省「現行の選挙運動の規制」(選挙運動期間、18歳未満の者の選挙運動の禁止、文書図画の制限) https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/naruhodo/naruhodo10_1.html
  5. 総務省「立候補を目指す方へ」(被選挙権、供託金、立候補の届出、選挙運動と政治活動の区別、収支報告書) https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/naruhodo/naruhodo18.html
  6. 熊谷市選挙管理委員会「選挙運動費用の制限と届出」(市議会議員選挙の法定制限額の計算式、人数割額501円・固定額2,200,000円、固定額の2倍4,400,000円を超えるときは3倍の6,600,000円、報酬を支給できる者の員数 市議会議員選挙9人・延員数45人、報酬を支給できない者) https://www.city.kumagaya.lg.jp/about/soshiki/senkyo/senkyokanriiinkai/oshirase/rikkouho.files/R7senkyoundouhiyou.pdf
  7. 延岡市「選挙運動費用っていくら?」(選挙の種類別の計算式、名簿登録者数108,100人・定数29での市議会議員選挙の制限額4,067,600円、市長選挙11,856,100円、選挙運動費用に含まれないもの) https://www.city.nobeoka.miyazaki.jp/soshiki/79/2729.html
  8. 青森県選挙管理委員会「寄附の禁止」(政治家の寄附の禁止、政治家名義の寄附の禁止、寄附の勧誘・要求の禁止、後援団体による花輪・供花・香典・祝儀の禁止、結婚披露宴の祝儀と葬式の香典の扱い、あいさつ状の禁止、あいさつを目的とする有料広告の禁止) https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/senkan/senkyo_sikumi_kifukinsi.html

本記事は2026年10月20日時点の公職選挙法・公職選挙法施行令の現行条文および各自治体の公表資料にもとづいています。条文はe-Gov法令検索の条文全文(公職選挙法は2026年9月3日施行の現行版、施行令は2026年9月24日施行の現行版)で確認しました。2027年3月1日に施行される令和8年法律第58号による改正内容は、同法令検索の施行日版の条文で確認しています。法令および各自治体の条例は改正される場合があります。選挙運動費用の法定制限額は告示日の選挙人名簿登録者数と議員定数で変わり、公費負担の単価・報酬の上限額・弁当料の額は自治体によって異なる場合がありますので、実際の判断にあたっては、必ずお住まいの選挙管理委員会にご確認ください。個別の行為が公職選挙法に違反するかどうかの判断は、具体的な事情によって変わります。本記事は一般的な解説であり、個別の事案についての法律上の助言ではありません。

株式会社MOPPs/0円選挙.COM

選挙運動・政治活動支援/立候補手続きの行政書士代行

京都大学大学院の現役社会人学生を中心とした学生ベンチャーです。政治現場10年以上の実務者、政策立案の経験者、法科大学院出身者、AI研究者が在籍しています。選挙カー・ポスター・ビラを公費負担の範囲内で手配し、候補者の持ち出しを0円に近づける支援を行っています。TEL 050-8885-6420/senkyo@mopps.co.jp

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